「フキハラ」のダメージは想像以上だった


他人の「不機嫌」は、私たちの脳にどれくらいのダメージを与えるのでしょうか? データ1は、他人の「ストレス」が周りの人にどれくらいの影響を与えるかを調べるために、電話で長々とクレームを訴えている人のそばに座った被験者の「ストレス度」を示す脳波を測定した結果です。

【データ1】他人へのクレームでもストレスは高まる

 

一見しただけで被験者の「ストレス度」を示す脳波が相当に強く出ているのがわかるでしょう。一時は100%にも達するほどです。念のために繰り返しますが、クレーム自体は電話の向こうの相手に向けられていて、被験者自身が怒られているわけではありません。それなのに、被験者の「ストレス」はここまで高まっているのです。実際に怒られている電話の向こうの相手に共感してしまった可能性もありますが、クレームを訴えている人の「不機嫌ノーラ(不機嫌な脳のオーラ)」がうつったことも否定できないと思います。

 

不機嫌な人から離れてもストレス状態が続く


実は実験を始めて15分後、被験者には別の部屋に移ってもらいました。「不機嫌ノーラ」から物理的に距離を取りさえすれば、「ストレス度」を示す脳波は治まっていくかもしれないと思ったからです。ところが残念ながら現実はそう甘くはありませんでした。

「ストレス度」を示す脳波が治まったのは、元いた部屋から出た瞬間だけで、すぐにまた強く出てきてしまったのです。これが、一度抱くとなかなか払拭できない「ネガティブな感情」のしつこさなのでしょう。嫌な人から離れることができたという「刺激」程度では、「ネガティブな感情」から解放されるのは不可能なのです。

おそらくクレームの電話をかけていた人は、自分の「不機嫌ノーラ」が、隣に座っている人にこのような深刻なダメージを与えたことなど想像もしていないに違いありません。このように“発信元”の悪気も自覚もなく起こってしまうのも「フキハラ」の特徴なのです。