2億年前の負け組のその後はハッピー!?
では、「2億年前の負け組」だった私たちのご先祖はどのように進化してきたのでしょうか? 当時のご先祖はとても弱い生物でした。ワニさんに出会ってしまったら一巻の終わりです。だから、ワニさんに出会わない能力を手に入れました。
ここまで書けばワニさんと私たちの大きな違いが薄々、見えてきたことでしょう。そう、それは、「今、目の前にない未来」を描く力、すなわち「展望力」です。
2億年前のご先祖が獲得した展望力はまだ原始的なものでした。この能力は私たちの脳内で主に「好き嫌い」という形で息づいています。危険につながりそうなことは「嫌い」、安全につながりそうなことは「好き」……と。
ワニさんには「この先」の心配はない?
一方で、ワニさんは私たちほど好き嫌いがありません。餌になればなんでもガブリです。さらに、ワニさんの天敵はカバさんです。群れをなす巨大なカバさんにワニさんが踏み殺されたり、食い殺されたりすることもあります。
ですが、お腹がいっぱいで川べりでゴロゴロしているワニさんは少々踏みつけられてもしっぽを振って嫌がるだけでなかなか逃げません。群れにもみくちゃにされて「こりゃたまらん……」ということになって、初めて逃げ出す場合もあります。
そう、つまりワニさんは先のことをあまり考えないのです。水中で獲物を待ち伏せる……という習慣は身につけていますが、習慣化していないことにおいては先のことをあまり考えないのです。
あなたは、ワニが羨ましい?
言い換えれば、この先の心配をしないのがワニさんです。
これって、なんと羨ましいことでしょう。私たちはいつもこの先を心配して、「私、このままで大丈夫かな……」って不安になっています。不安を軽くするために、いつも頑張っています。あなたも日々、全力で頑張っているのではないでしょうか?
ですが、これこそが私たち人間が他の生き物との最大の違いなのです。特に人間は他の哺乳類と比べても抜群の展望力を持っています。
このことが人と他の生き物を区別する最大の違いであることは、心の脳の研究者のほぼ全てが合意することでしょう。人の展望力はスゴイのです!!
展望力の光と影
ただ、抜群の展望力を持っていることは、私たちにとって良いことばかりではありません。今、幸せであっても、この先の幸せを気にして不安になったりします。
ワニさんのように「今、ここ」の幸せだけを生きるわけにはいかないのが私たち人間なのです。私たちはワニさんと違って、「この先の物語」がないと生きづらい生き物になっているのです。
特に現代社会は変化が激しいです。そしてグローバル化で複雑に入り組んでしまっています。
展望力に優れた私たち人間も、限界に陥りやすいようです。実際、可能性の塊であるはずの若い人たちも「この先」を見失いやすい状況が知られています。
私達はどうしたら良いのでしょうか?
展望の生き物だからこそ、キャリアリテラシーを持ちましょう!!
この記事を読んでくださっているあなたなら、もう答えはおわかりですね。そうです、あなたのこれからの物語を紡ぎ出せばいいのです。
それをお手伝いするために心理学者らが構築したものが、いわゆるキャリア理論と言われるものです。そして、この理論を駆使してあなたを支える専門家がキャリアコンサルタントです。
私は、キャリア理論がこれからの時代、読み書きのリテラシー、ITリテラシーに続く新しい常識になると考えています。そして、日本人の遺伝傾向に合ったキャリア理論とその使い方の研究を行っています。この連載では、そのエッセンスを引き続きご紹介したいと思っています。
さあ、あなたのキャリアリテラシーを高めて、あなたの最高の物語を紡ぎ出しましょう!!
また、ご一緒できるのを楽しみにしています。
イラスト/池田マイ
前回記事「余命2ヵ月と診断された女性が実現した10の物語。心理学とキャリアのプロが伝える本当の「幸せ」とは」>>
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