作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた山本理沙。その赤裸々な声は、まさに「現実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の夫婦問題を浮き彫りにします。

今回のテーマは、最も解決し難い夫婦問題の一つと言われる「セックスレス」について。5年間夫婦として連れ添い、DINKS(Double Income No Kids)生活を謳歌し、夫婦関係は極めて良好……と信じていたのは夫だけ。結婚記念日の翌日に妻に離婚を告げられ、突然別居生活が始まったと言う俊哉さん。男性からはあまり語られないセックスレスの実情と後悔を語っていただきました。

 
取材者プロフィール 俊哉さん(仮名)39歳
職業:証券会社勤務
家族構成:別居中の妻(37歳)

     
 

気づけば4年間、セックスしていなかった


「去年の秋頃、突然『離婚したい』『あなたと結婚生活は続けられない』と言われ、妻の紀香が家を出て行きました。大袈裟かもしれませんが、あの日から僕の人生は一変しました」

現在、妻の紀香さん(仮名)とは別居中という俊哉さんは、静かな溜息とともに語り始めました。端正な顔立ちに、シンプルながらも上質なセーターに身を包み、なかなか手に入りにくいと最近話題の高級腕時計を袖から覗かせる姿に、その弱った声は少し不釣り合いな印象です。

「たぶん……このままだと離婚になるんでしょうね。できることなら、僕は妻に戻ってきて欲しいですけど」

今、俊哉さんは妻が記入済みの離婚届を保持している状態で、「タイミングはあなたに任せるから、夏までに提出して欲しい」と妻から言われているそう。あまり長引く場合は、おそらく弁護士に任せることになりそうだと言います。

「妻が家を出て行ったのは、結婚記念日の翌日でした。ちょうど週末だったので1泊で箱根の温泉旅館へ行って、花束と、妻が欲しがっていたシャネルのミニ財布もプレゼントして。クリスマスや年末も近かったので、休みはどうするか、久しぶりに海外でも行っちゃう? なんて話していたんです。

あの日のことは、もう記憶が擦り切れるんじゃないかってくらい何度も思い返しました。でも妻も楽しそうにしていたし、会話も弾んでたはずです。だから、まさかその翌日の夜に180度人格が変わったように離婚を切り出されるなんて。予想できる男はいないと思いますよ……」

紀香さんは夫と同じく金融系の会社に長年勤めており、二人は共働きの夫婦でした。都心のタワーマンションに住み、子どもがいないため自由になるお金にも余裕があり、夫婦はグルメや旅行、ゴルフなどを定期的に楽しんでいたそう。

少なくとも俊哉さんにとっては、夫婦関係は良好、喧嘩をした記憶もほぼなく、もちろん離婚を考えたこともありませんでした。

「突然『離婚』と言われたときは、一瞬妻が何を言っているのかわからず、冗談か何かだと思いました。動揺しながらも、もちろん引き留めるというか、どうしていきなり? と理由を聞くと、彼女はこれまで見たこともない強い口調で言ったんです」

ーー知ってる? 私たち、もう4年セックスしてないんだよ。私は子どもが欲しい。もうあなたと結婚生活は続けられない。