4年間のセックスレスの末、結婚記念日の翌日に「あなたと結婚生活を続けられない」と突然離婚を言い渡され、別居生活が始まったという俊哉さん(39歳)。その間、妻から何度も「レスを解消したい」と訴えられていたものの、俊哉さんが妻に向き合うことなく、さらに当時のことは「実はあまり覚えていない」と後悔に暮れる日々。

むしろ夫婦関係は良好だと信じていた俊哉さんですが、突然妻を失った絶望と後悔、そして、どうすればセックスレス解消の可能性があったのか、彼なりの見解を語っていただきました。

 
取材者プロフィール 俊哉さん(仮名)39歳
職業:証券会社勤務
家族構成:別居中の妻(37歳)

     
 

「どうでもいい男」に成り下がった夫


俊哉さんが独身時代から住んでいた1LDKのタワーマンションの一室。広さは60平米弱で、夫婦はそこで5年間暮らしていました。共働きで子どものいない二人にとっては不便なく快適な部屋であったはずですが、夫が賃貸契約更新したとき、妻は一人静かに離婚を決めたそうです。

何年もセックスレスに悩んでおり、子どもも欲しかった彼女にとって、この夫の行動は「私と子どもを作る気がない」という意思表示と受け取られ、致命的な引き金となったのです。

「僕にとっては、別居も離婚も本当に突然のことでした。でも後から聞いたら、妻は何度も絶望を繰り返していて、もう僕に期待するのはやめたと。それどころか、どんどん『どうでもよくなった』と言っていました」

妻が出て行った直後、俊哉さんはもちろん彼女を引き留め、何度も話し合いを求めましたが、彼女の意思は驚くほど固いものでした。

「正直、あんなに強い意思を持った彼女を見たのは、長い付き合いの中で初めてのことでした。優しくて真面目で、いつも笑顔で居心地の良かった妻に『あなたはどうせ変わらないから、今さら何を話しても無駄』と、バッサリ拒絶されて……。知らない間に彼女がそこまで変わっていた……というか、その変化に全く気づけなかった自分が心底情けない」

以前のようにセックスを求めることも、子どもの話をすることもなくなった妻との関係を「良好」と思い込んでいた俊哉さんには青天の霹靂のような出来事でした。

「何ならむしろ……わざわざ気まずいことを口にしなくなった妻に安堵していたし、面倒なことは言わず放任してくれる彼女に、やっと男の扱い方がわかるようになったんだななんて感じていました。いや本当に、盛大なる勘違いです。

たぶん、女性が怒ったり悲しんだりしているうちは、まだ関係回復の余地があるんですよね? でも『どうでもいい男』に成り下がった瞬間、もう何も言わなくなる。その状態を居心地よく感じていたなんて、愚かとしか言いようがないです」

男女の力関係は、このように突然逆転するとよく聞きます。

そして、もともと金融系の会社に勤め経済力もあった妻は、早々に一人暮らしの部屋を借り、別居生活が始まりました。それでも当初、俊哉さんは大きなショックを受けながらも「妻は近いうち戻ってきてくれる」と思っていたと言います。長年日常を共にしたのだから、その時間の重みや情がそう簡単に消えてなくなることはないと考えていました。

しかし一方で、妻は新しい人生を着々と歩んでいたのです。