自身が公立小学校・中学校で学生生活を謳歌した経験から、子どもに中学受験をさせる必要はないと考える正勝さん(43歳)。しかし、大学の同窓生で私立中高一貫校育ちの美佳さん(43歳)は都心に居を構え、2人の子どもには中学受験をさせたいと主張、価値観の違いが浮き彫りになり……?

後編では、妻の美佳さんにお話を伺います。

前回記事
「家は都心一択、中学受験は絶対条件」笑顔で譲らない私立育ち妻の狂気。公立推し夫の反論とは?>>

 
取材者プロフィール
 夫:正勝さん(仮名)43歳、金融系企業の会社員
妻:美佳さん(仮名)43歳、メーカーの会社員
     
 

中高一貫校育ち妻「自分が親にしてもらって感謝していることは、子どもにも」


「私は中高一貫校で学んでメリットがたくさんあったと思っているんです。6年間で得た考え方や想い出は卒業後もコンパスやカイロみたいに、指標となり、心を温めてくれました。いまだに迷ったときに、先生や友達の言葉を思い出すこともあります。10代に環境が与える影響って大きいと実感しました。

高校受験がない分、部活に打ち込んで全国大会に出ることもできましたし、進学校だったので大学受験を頑張ろうという雰囲気にも助けられました。授業料や塾代はかかったと思うので、親に感謝しています。だからこそ、自分が親になったら子どもにもその環境を与えるためにできることは頑張ろうと考えています」

正勝さんと入れ違いで取材に応じてくれた妻の美佳さん。上品でにこやかな雰囲気で、正直に言えば正勝さんに聞いていたような頑固さは感じられません。でもお話を伺ううちに、そこには何かしらの強い意志が感じられました。

ともに東京出身、同じ大学の卒業生というご夫婦。しかし夫と妻の子育ての方針にズレが生じてしまいます。このようなケースは、最近の過熱した中学受験事情のまえに起こりがちです。

背景には、就職氷河期世代が親世代になり、彼らの親である団塊の世代ほどには給与が上がらず出費に対してシビアにならざるを得ないこと、「教育格差」「格差社会」という言葉が取りざたされ、子どもに少しでもいい教育を与えたいという心理が働いていることが挙げられます。

潤沢な教育資金があれば選択肢は広がるものの、どこまで教育費に割り充てるか、というのは個人によって幅があるでしょう。それは一見「似たもの夫婦」の正勝さんと美佳さんにとっても切実でした。