出産という「結果ありき」で考える違和感

地方で結婚・出産で奨学金減免?「何かと引き換えにしなければならない」政府の少子化対策に未来はあるのか_img0
 

子どもが生まれるには途方もないプロセスがあります。そもそも、この人となら人生をともにしてもいい、そこまでいかなくても、少なくともこの人となら子どもを産み育てられると思えるパートナーに出会う必要がありますし、たとえ出会えたとしても、誰でも妊娠に至るわけではありません。

結婚したくない、子どもはほしくないと思う人が増えていますが、結婚したくてもできない、子どもがほしくてもできないという人も多いと思います。「出産」という非常にデリケートでプライベートな問題に対して、教育費の負担軽減を条件に持ってくるのは、改めて大きな違和感があります。

結婚や出産をしたいけど奨学金が心配という人はいますし、そういう人にはピンポイントで効果があるかもしれません。しかしだからといって、条件として結婚・出産を持ってくるのではなく、教育と結婚・出産の問題は別で考えるべきです。

給付型の奨学金の拡充や、奨学金の一律の減免といった教育費の負担軽減をすること。さらに妊娠・出産・子育てにかかる費用の負担軽減をしていくことで、結果的に出産を選択肢として考えられるようにするべきではないでしょうか。

 

待機児童問題も解決していない


そして、今回の政策が、出生数が80万人を切り、いよいよ危機的状況になった今打ち出されたことにも違和感を覚えます。一言でいえば、「もっと前からいろいろやっとけよ」ということに尽きます。少子化が問題だと言われ始めてから随分経ちますが、手を付けてこなかった課題があまりに多いのです。

例えば、危機的な少子化なのに待機児童問題は解決しておらず、そもそも子どもを増やすにもキャパがないという現状に、矛盾を感じざるを得ません。地域にもよりますが、保育園はもちろん、小学生の学童でも待機児童がいます。NHKがアンケート調査した結果、学童の待機児童は23区全体で、2514人にのぼる(※)といいます。
※NHK首都圏ナビ『学童保育が足りない!待機児童問題が深刻に 保育園は増えたけど…』より