大人気バラエティ番組『プレバト』で芸能人の俳句を添削する、俳人の夏井いつきさん。
皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

芸能人渾身の句をバッサバサと添削し、歯に衣着せぬ物言いで大人気ですが、夏井さんに添削された句はより磨かれ、詠んだ人の伝えたいことがより強調され、生き生きとしたものになります。

写真:Shutterstock

決して知識をひけらかすでもなく、やみくもにぶった切るでもなく。
ただただ、ここをもっとこうしたら良くなる! という俳句への半端ない情熱が伝わってきます。

そして何よりお話が本当に面白く、人を惹きつけてやまない不思議な魅力が夏井さんにはあります。

 

困難を抱える子どもたちを預かっていた


筆者が夏井さんに興味を持ったのは、あるインタビューを読んだことがきっかけでした。夏井さんは愛媛県松山市でご家族とお住まいですが、お子さん以外にも、困難を抱えた子どもたちのお世話をされていたといいます。

「当時、うちでは俳句が縁で知り合った10代後半の子どもを3人預かっていました。3人とも家庭に居づらかったり、精神的に問題を抱えていたりする子どもです。もともと教師をしていた私は、放っておけなかったんです。リストカットをする子もいて、時々、夜中にそういうことが起きてしまう。それを知った兼光さんは、松山じゅうの救急病院をすべて調べ、何かあったときにすぐ対処できるようにしてくれました。リストカットした子を、二人で病院に連れて行ったこともあります」

――婦人公論 夏井いつき「私が「毒舌俳人」として活躍できるのは、再婚夫のおかげ」より
 


これを読んだとき、「こんな大人が増えたら社会はもっとよくなるのに」と心から思いました。
 

俳句界からのバッシングの嵐


さて、今回紹介するのはそんな夏井さんのご著書『瓢箪から人生』です。

『瓢箪から人生』夏井いつき 小学館 1485円(税込)

瓢箪から駒ならぬ、瓢箪から人生は、言葉を紡ぎ、俳句の種を巻き続けることで人との縁が次から次へと芽生えていく、そんな夏井先生の人生を綴ったエッセイです。

夏井さんは、全国で句会ライブを開き、どんな人でも気軽に俳句に親しめるよう、俳句の種を撒き続けていきます。

今では最も著明な俳人の一人である夏井さんですが、俳句の種まき運動の中では様々な困難があったといいます。

俳句甲子園を始めた当初は、俳句界からのバッシングの嵐に晒された。「高校生を集め、俳句の悪口を言わせ合っている」「作品を点数化するとは如何なものか」と書かれたこともあったし、審査員の手配で依頼電話をかけると、「お前が夏井か! 地元の恥ぢゃ!」と怒鳴られたこともあった。
――『瓢箪から人生』P239より

 


しかし、夏井さんは種蒔き運動を続け、句会ライブは大盛況。評判を呼び、蒔かれた種は芽吹いて育っていきました。

 
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