消費税の申告の作業を効率化する手順とは?
佐々木:じゃあとりあえずは、この6年間の所得税→消費税の申告の作業を効率化する手順ですが、こんな感じでしょうか。
①請求書(領収書)を、1万円未満と1万円以上でわける
②1万円以上は「インボイス」と「それ以外」にわける
③「インボイス」の登録番号が、本物かどうかを確認する
④税率が「8%」と「10%」のものに分ける
アツミ:死にそうに面倒くさいですね……。
常松:インボイス制度の弊害としてよく言われる、事務負担の激増って、こういうことなんですね……。
小泉:企業でも経理担当者の方は本当に大変だと思います。例えば西田敏行さんが理事長を務めている日本俳優連合が反対しているのは、この点なんですよね。
日俳連は映像作品の二次使用料を会員である俳優・声優さんに分配しているそうなのですが、30分番組一件で500円ほどで、その細かな集積で年間1億円くらいになるのだそうです。
それを多くの会員に分配しているので、決して一人あたりの金額は多くはありませんが、それも、かつての俳優・声優たちがデモやストライキを起こしたことで勝ち取ってきた権利だと聞きました。今回、そのすべてにインボイスを求めて、ひとりひとり免税か課税か追いかけて処理する事務負担は、もはや日俳連の経理には背負いきれませんし、しかもこの手間は、何の利益も生みません。
常松:制度の内容に納得して登録した方は良いのですが、この記事を読む前に登録をして「あれ?」と思った人は、取り消しできるんでしたっけ。そういう選択肢もあれば教えてください。
小泉:簡単に取り消すことができますよ。取り消しのための書類のフォーマットを公開し、ダウンロードできるようにしている税理士さんもいるので、そういうのを使うといいですね。
アツミ:そもそもクライアントに言われるままに課税事業者登録した人って、こういう実態まで分かっている人は多くはなさそうです。10月以降は帳簿をつけることが必須ってことはもちろん、そもそも帳簿って何? って人ばっかりのような気も。そんな人が自分で申告とかできます?
佐々木:消費税の申告って難しいし、インボイスの制度はあまりに複雑なので、まず自分で申告はできないと思います。
アツミ:そうしたら、それを税理士さんに頼むお金も必要ってことですね……。
常松:インボイス制度導入の目的に「正しい申告をするため」っていうのがあったけど、これだけ面倒だと逆に正しい申告って難しくなりそうですよね。
佐々木:おそらく来年の3月末には「消費税の申告をしませんでした」という課税事業者がすごく多く出てくると思いますし、同時に払わなきゃいけない消費税を「払えない」と言う人もすごく多く出てくると思います。そもそも払うという認識を持てていない人がいると思うし。
アツミ:大パニックになりそうですね。
佐々木:税理士事務所もパニックになると思います。それと実は消費税って、税金の中で最も滞納が多い税金なんですよ。それってそもそも税金のシステムとして破綻しているってことだと思うんです。
常松&アツミ:え?!
次回は「インボイスで浮き彫りになる消費税の問題。信じ込まされている『益税問題』と、滞納続発の『赤字でも払わされるシステム』」をお届けします。
※記事内容を一部修正しました。
取材・文/渥美志保
構成/常松静香(編集部)
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