ロングテイクで撮られた激しいアクションシーンを自らこなしたチョン・ドヨンは、「女性のアクションは大したことないだろうという世間の偏見を覆したかったので、より激しく演じた。身体が痛くてもやり遂げなければならないと自分を洗脳してがんばった」とコメント。――あ、この映画、冒頭のシーンから痛そうな暴力的な場面が続くので、血が苦手な方は閲覧注意です。私も痛いのは苦手。なのですが、ピョン・ソンヒョン監督の描くノワールな世界観とチョン・ドヨンの演技に引き込まれ、あっという間の2時間19分。

『キル・ボクスン』撮影中スチール。©︎No Ju-han/Netflix

私のような洋画好きもハマる、タランティーノ的なポップでスタイリッシュな映像。チョン・ドヨンが着こなすスーツの装いも素敵ですが、ハッとしたのは、目の下のクマやシワを隠さない、彼女のリアルな美しさ。年齢相応の陰影が刻まれた顔には色気があると前から思っているのですが、彼女を見て再確認。そんなチョン・ドヨンが演じるからこそ、殺し屋の顔も疲れたワーキングマザーの顔も、リアリティが生まれるのです。

 

そしてこの映画を最も魅力的にしているのは、やはりその娘への愛と任務遂行のジレンマ。単なる殺しの作品ではなく、根底に愛があるから深みが出て、感情移入出来る。愛は人を強くするけれど、同時に愛が人を脆くする。ときに愛は、最大の弱点にもなる。そんなことを思いました。

『キル・ボクスン』撮影中スチール。©︎No Ju-han/Netflix

肝心のジェウクのシーンですが、ソル・ギョング演じる殺しの請負会社の代表チャ・ミンギュの若い頃を演じていて、圧倒的な存在感。短いけれどとても印象に残る演技を見せていて、この記事を書いている4月6日のTwitterの世界トレンドに、「#イ・ジェウク」がランクインするほど話題に。


ジェウクはソルの若い頃を完璧に演じるため、彼の話し方や動き方のトーンやスピードやニュアンスを覚えて撮影に挑んだそう。『還魂』で彼のファンになって出演作を観たもののどれもいまいちハマれなかったのですが、今回の影のある役はジェウクのキャラクターにぴったり。この作品でジェウク沼に堕ちる人も多いはず(トレンド入りしてるし!)。

長くなりましたが、おすすめのNetflix作品です。

 


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