自然科学研究者も参加。かつて日本にあった循環の文化が物語をユニークに


この映画がユニークなのは、作品のプロデューサーで美術担当でもある原田満生さんが立ち上げた「YOIHI PROJECT」ーー日本映画のクリエイター&俳優と、世界の自然科学研究者が連携、「映画」で環境問題を伝えていくプロジェクトが関わっていること。実は映画の主要人物二人の商売「汚穢屋」は、各家庭にたまった「排泄物」を買い取り、契約農家に運ぶ仕事。江戸時代の日本の循環型社会を象徴するものであると同時に、下水道が整備されていない時代に絶対に欠くことができないエッセンシャルワーカーであるともいえます。

【寛一郎×池松壮亮】“最底辺”で祈るように生きる「彼ら」はいつも変わらず社会を回す_img4

 

寛一郎:そもそもの原田さんのプロジェクトは知っていたんですが、そこに「汚穢屋」を持ってくるっていうのがすごいなと。「汚穢屋」は物語のパンチにもなっているし、ある部分を緩和してもいるようにも思います。

 

池松:僕自身、「汚穢屋」のような商売を知ったのは今回が初めてで。今の時代だと衛生的な面でありえない話ではあるんですが、江戸時代に超循環型社会が出来上がっていたということを知る機会になりました。ユニークでクレイジーでクレバーで今やるべき素晴らしい企画だと感じました。

寛一郎:江戸時代にヨーロッパの人が日本に来ると、多くの人が「こんな綺麗な街はない」って言ったらしいんですよ。当時のヨーロッパはそういうシステムがなく不衛生で、日本から見たらもったいなくもあった。そういう循環の文化は、どこの国をまねたわけでもない、日本の美徳だと思います。

池松:命を含めてすべてを「循環させること」が、生活と、生きることとつながっていた。ただやはりそういう商売の人は、最底辺におかれていたわけで。

寛一郎:たしかに。