「健全」な男女関係とは?
相手は5つ年下のスタートアップ企業の役員の男性。仕事は忙しそうだけれど、時間に融通が効き昼間も会うこともできたそう。
「関係を持ったといっても、自分でもびっくりするくらいライトな関係です。しっかりデートするのは1、2ヵ月に一度くらい。あとはちょっとした空き時間にお茶をしたり」
思い切って、その年下の彼は既婚子持ちの静香さんと付き合うことにメリットがあるのかと聞いてみました。
「私も最初はそう思ったんですけど、彼は『顔がタイプだから』『もともと年上が好き』と言っていました。また今は結婚願望がないらしく、同年代の独身の女の子が相手だと何かと大変みたいです。まあ、お互い利害関係がうまく一致してるだけかもしれませんが、かなり平和な関係でした。
彼に会うとリフレッシュできて、窮屈でストレスだった娘の小学校受験なんかも乗り切ることができたし。本当に感謝してます」
静香さんは「彼と息抜きができるおかげで、むしろ家庭は円満になった」と爽やかに微笑みますが、やはり複雑さは感じます。
やるべきことをやった上で、彼女の言うように「月に数時間の自由」を楽しみ、そして結果的に本人や家庭の状態が良くなるなら、他人が一概に否定することでもないのかもしれません。ただ、結婚制度的にはもちろんNG。健全な選択肢であるとも言えません。
それを伝えると、静香さんは神妙な顔で続けました。
「言ってることはわかります。でも……それは表面的なルール上のことで、本質的にはむしろ健全だと思います。だって年収や学歴や家柄とか、そういうの一切知らないのに彼に好感を持ったんですよ。健全じゃないですか?」
静香さんの中では、条件ありきで夫を結婚相手に選んだことの方が“本質的には不健全”だったと感じるようです。そして彼女の場合、おそらく一度結婚しない限りは、純粋な気持ちで異性に好感を持つことは不可能だったとも。
静香さんのように、結婚という制度に必要以上に縛られている人は多いかもしれません。
ただ事実、その年下の彼との関係は家庭に支障を与えることはなかったそうです。むしろ静香さんは、若くして様々な事業を手がける彼から刺激を受け、これまでの受け身な性格から、色々なことに挑戦するように変わりました。
「彼に『どうして仕事しないの? つまんなくない?』と何度も聞かれたんです。最初は特に働きたい欲も必要性もないから、と答えていましたが、たしかにやってみなきゃわからないと思ったんです。前の秘書の仕事は、結婚と同じように特にやりたいことでもなく条件だけで選んだ仕事で、別に楽しくもなかった。でも今なら違うかもと思って」
そして静香さんは、年下の彼が紹介してくれたエンタメ系の会社で、まずは業務委託で事務の仕事を始めました。
たしかに人生において、「新しいことに挑戦するきっかけ」を与えてくれる人は貴重だと思います。しかしその人物が、年下の不倫相手というのはやはり複雑と思ってしまいますが……。
実は時代の変化と共に、自分が専業主婦であることにもコンプレックスを感じ始めていたという静香さんは、その後、人生で初めて仕事にやりがいを感じるようになったそう。
さらに仕事の縁で保護犬のボランティアに携わるようになり、「自分の人生に本当に必要なもの」がだんだんとわかってきたと言います。
来週公開の後編では、仕事を通して変わり始めた価値観、不倫を終えた際の一波乱についてお話いただきます。
取材・文・構成/山本理沙
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