手に職を付けたい、芸能人だからこその悩み


──登録しているベビーシッターは芸能の仕事を目指している方が多いんでしょうか?

伊藤:今25人ぐらいのシッターがいますが、9割ぐらいがそうです。事務所に所属している子もいるし、フリーランスで歌手としてやっている子もいます。残りの1割は看護師と、保育の資格を持ってる人たちです。利用者から専門的なアドバイスも欲しいというお声があったので、そういう方たちにも入っていただいています。ただその方たちもエンターテイメントスキルを持ってないわけじゃないんです。面談をしたり、電話で密にお話すると、実はバイオリンを10年やってました、なんてことがあって。その経験はまさにエンターテイメントですよね。そういった出会いから、芸能の仕事をしていない一般の方でも色んなエンターテイメントの特技を持っているんだと気づかされました。シッターみんなが個々の好きなこと、得意なことを持っているのは特徴ですね。

「前日にオーディションが決まることも…」芸能人の働き方問題を解決するベビーシッター事業立ち上げの背景とは_img0
 

──芸能のお仕事をしている方は、それを生涯の仕事にしていくかどうかなど、キャリアについて考えることも多いのではないかと思います。ご自身のキャリアをどういうふうに考えていましたか。

 

伊藤:芸能の仕事はずっとやっていきたいというのは、ずっと思っていました。いい意味でも悪い意味でも自分で区切りをつけないとずっとやってられることはやっていられるお仕事ではあるんです。でもそれ1本で自分の生活費をずっと稼げるのか、結婚して子どもが生まれた時、芸能の仕事だけでやっていけるのかと思った時に、手に職をつけたいなっていうのは10代の頃から思っていました。そうやって考える中で出会ったのがベビーシッターでした。もし芸能の方で難しくても、ベビーシッターという仕事はもうひとつの天職だと思ったし、50歳60歳、自分がおばあちゃんになっても保育のスキルがあれば、それは一つの仕事としてずっとできる。コロナ禍になって、芸能の仕事が1回ゼロになったことがありました。全部のお仕事がキャンセルになり、すごく気持ち的に落ち込んで、20代後半に差し掛かる時期でしたし、 この先どうしようとすごく不安になりました。そのときに、テレワークになって、学校や保育園がお休みになったことでベビーシッターの需要がすごく高まったんです。ベビーシッターをやっていてよかったなってすごく思いました。