もう夏の旅行計画はたてましたか? 家族や友人と旅に行くのが当たり前になっていた方も、今年は久しぶりに「ひとり旅」をしてみてはいかがでしょうか。
3月に発売後、3か月で7万部を突破した『50歳からのごきげんひとり旅』は、料理家として活躍する山脇りこさんが、50歳からひとり旅にチャレンジし、未知の世界にひとりで身を置くワクワク感と、緊張感も含めた充実感に魅了されていく様子が描かれた旅エッセイです。

山脇さんが実際にひとり旅をした国内・海外のおすすめプランや、お気に入りのお店がたっぷり紹介されています。本書を読んで、実際に京都や岐阜のお店に行ってみたという方も多いそうです。今回は、山脇さんにひとり旅の魅力についてお話をうかがいました。

 


著者プロフィール
山脇 りこ(やまわき・りこ)

料理家。テレビ、新聞、雑誌、WEBなどで和食をベースにした季節感のある家庭料理を紹介している。長崎市の観光旅館に生まれ、山海の幸に囲まれて育つ。子どもの頃から食いしん坊で、旅好き、列車好き、宿好き。国内外の市場や生産者をめぐり、食べて作る旅を最上の愉しみとしている。『明日から、料理上手』(小学館)、『食べて笑って歩いて好きになる 大人のごほうび台湾』『いとしの自家製』(ぴあ)など著書多数。旅・食・生産者をテーマに取材・執筆も行う。本書は初めての旅エッセイ。

 

ひとり旅は「120%私のための時間」。一つの場所に自分が満足するまでいられるのはひとりだからこそ


――本書最初にある「私の旅の5つのルール」が印象的でした。これにまつわるエピソードがありましたらおしえていただきたいです。

山脇りこさんの「私の旅の5つのルール」
1.気ままに歩く
2.できるだけ公共交通機関で動く
3.疲れたら早めに休む
4.用心深く。無理な冒険はしない
5.凹まない、怒らない、すべてをポジティブに受け止めよう

『50歳からのごきげんひとり旅』より引用
 

山脇りこさん(以下、敬称略)「3.疲れたら早めに休む」については、これまでの旅で学習したことなんです。私は貧乏性なのか、旅行だとテンションが上がって2万歩以上歩いてヘロヘロになって、次の日の午前中を台無しにしたり、夫との旅でも無理をして熱を出したり。それでちょっと反省して、ひとりだと特に、とにかく早めに休むことを心がけています。絶対に行きたかったカフェがあったとしても、たどり着く前に疲れたら、その手前のカフェでもいいから入って休むようにしています。
「5.凹まない、怒らない、すべてをポジティブに受け止めよう」については、旅の間、ごきげんでいたいという思いからのマイルールです。東京でのふだんの生活では、いつもなぜか急いでいて、イラっとくることもあります。旅ではそうならないようにしたいなと思って。自分がイラッとくると自分自身に返ってくるから「怒りは自分に盛る毒」というネイティブアメリカンの言葉を思い出して、いい方向に考える練習をしている感じです。普段もできるようになったらいいんですけど。
なにしろひとりだから、計画していた場所の全てに行けなかったとしてもいいんです。ひとり旅に失敗はありません。自分がもう一人の自分と二人で旅行している感じなので、自分と自分、ふたりが楽しければいいんです。

――ひとり旅だからこそできることは何でしょうか。

山脇 誰かと旅に行くと、すごく気に入ったからといって一つの場所に4、5時間ずーっといたり、何度も行くというのはなかなか難しいと思うんです。
でも、ひとり旅というのは自分がやりたいことをできる「120%私のための時間」です。

パリなど欧州の場合はレストランは二人以上でないと予約すらできないお店がほとんどですよね。でもそれを逆にチャンス! ととらえて、パリのボン・マルシェ(デパート)の地下で食べてみたかったお惣菜やハムを買って部屋で食べたんです。それが楽しかった!
友達と行ったらきっとレストランに行くから、ひとりならではの楽しみだな、と思いました。
ほかにも、例えば、私は少し昔のアクセサリーや器が好きなんですけれど、即決で買えなくて、何度もお店に見に行ったりして。誰かと一緒だと引かれそうですが、ひとりだと「何度も同じ場所に戻る」のも自由にできます。

パリ地下鉄、ひとりだったけどいろいろあって撮ってもらった貴重な1枚

この前、大阪の中之島美術館の「大阪の日本画」という展示を一人で見に行きました。一時間ぐらいで観終わるかなと予想していて、その後に行きたいカフェがあったんです。でも、展示があまりにも素晴らしくて四時間ぐらい美術館に滞在していました。そういう「自分が居たいだけそこに滞在する」ことは、誰かと一緒にいたらできないと思うんです。