ここ数年で「ルッキズム(外見に基づく差別や偏見)」という言葉が浸透し、容姿イジリや見た目で人を差別することはダメ、という認識が定着しつつあります。少し前まではテレビでも出演者の容姿をイジるということが普通にありましたが、最近では少なくなったように感じます。

しかし、ルッキズムはダメだよね、それで見た目問題は全て解決! とはいかず、見た目に関する様々な議論は残ったまま。人の見た目について言及しなければそれでいいというほど、ルッキズムの問題は簡単ではないのです。ルッキズムの問題に付随して広まった、「ボディポジティブ」や「セルフラブ(ありのままを愛する)」という考え方も、欺瞞を孕んでいると感じることもあります。

『ブスなんて言わないで』(講談社)より

そんなルッキズムの問題を正面から取り上げ、決してきれいごとで語らず、誰もがスルーしたり、掘り下げなかったようなルッキズムに付随する疑問や論点に、鋭角に切り込む作品があります。

それが、とあるアラ子さんの漫画『ブスなんて言わないで』(講談社)です。

 


「答えが出ない」疑問をスルーせず、切り込む


主人公の山井知子(やまいともこ)は高校時代、「ブスだから」という理由で壮絶ないじめに遭っていました。いじめの主犯格だと思い込んでいた白根梨花(しらねりか)が、美容研究家になりルッキズムについて語っている記事を見て、復讐を決意……というところから物語は始まります。

見た目で優遇される側の梨花も、差別される側の知子も、立場は違えどルッキズムに悩まされ、それぞれ悩みを抱えています。梨花は梨花で、容姿端麗であるがゆえに“ビッチ”と言われたりひがまれたり、美人だからこそフラットに見てもらえないという苦しみを抱えています。

この漫画は、
・見た目に関する「自虐」はよくないことなのか
・「ミスコン」はダメなのか
・「見た目イジリ」で笑いをとることはダメなのか
といった、簡単には答えの出ない疑問を投げかけてきます。