そして原告側の弁護士が最も問題視しているのは、リゾとプロダクション会社が、ツアー開始後に体重が増加したダンサーのことを「やる気が感じられない」と責めてクビにしたこと。

体重増加を理由に解雇されたという、元バックダンサーのアリアナ。

体重増加の理由を聞かれたアリアナ・デイヴィスは、自分が摂食障害であることをチームに報告したにもかかわらず、ミーティングで解雇を告げられたと主張。

 

ほかのダンサーもそれを見て辞職を申し出たところ、リゾが激怒。殴られそうだったのを間一髪で助かったものの、そのときリゾは「あんたは(殴られなくて)ラッキーだね!」と叫んだと言います。これがあの「MeToo」ムーブメントが盛り上がっている現代のハリウッドの話なの? と、耳を疑いたくなるエピソードの数々。

リゾから殴られそうになったという、ノエル。

身長178cm、体重170キロのリゾは、コンプレックスに感じていたその体型を武器に変えて、「トゥワーク」というヒップを揺らすダンスの圧倒的なパフォーマンスでスターになったアーティスト。自分の体型について、過去にこう語っています。

「私が自分のボディを好きになるのに、どれくらいの時間がかかったと思う? 以前、ヒップは身体の中で一番嫌いなパーツだったわ。だけどそれを好きになる方法を学んだの。そして今や、みんなが私のヒップのことを話題にせずにはいられないのよ。あなたはあなたでいて、自分であり続けて。あなたの喜びを、他の誰かに奪わせてはいけないわ」

「私にとっていちばん大切なのは、自分のボディに対して前向きであることと、自分を愛すること。まずは私たちが自分自身を救うことで、やがて世界も救えると信じているから」

そんなポジティブなメッセージで世の中の人々をエンパワーしてきたリゾが、まさか、こんなことで訴えられるなんて。今まで彼女の歌や生き方に救われてきたファンたちの失望は大きく、ツイッター(現X)ではその怒りや悲しみを動画メッセージで投稿するファンたちの姿も。

ダンサーにとって体型管理はプロとして当然、という側面はあるものの、ほかのエピソードを聞いてしまうと、リゾ側の悪意を疑ってしまいたくなります。

また、プロダクション会社のマネージメントスタッフはほとんどが白人で、黒人のダンサーにのみ「怠け者だ」などと非難。白人に対してそのような言葉が向けられることはなかったともいい、人種差別疑惑も。

要するに、絶対やっちゃダメなことを、いちばんやっちゃダメな人が全部やっていたということが、白日のもとに晒されてしまったのが今回の事件なのです。