超有名進学校に、かつて息子さんを通わせていたという響子さん(仮名・43歳)。過熱した中学受験の勝者……かと思いきや、代償は大きなものでした。

響子さんの夫で、幼い頃に親御さんと離別、苦労したという英太さん(仮名・45歳)。まるで自分を育て直すかのように息子の中学受験に没頭、お金と時間と情熱を投じます。

その甲斐あって息子さんは塾の校舎で1番、全国模試でもトップレベルの成績を連発しますが、その陰で英太さんの「伴走」は、深夜に立って勉強させるなど一線を超えていきます。

そしてついに「表面張力一杯まで注がれた水」はコップをあふれ出し……?

 

取材者プロフィール響子さん(仮名):43歳、会社員。
英太さん(仮名):45歳、税理士。


      
 

狂気を帯びていく夫に、妻は……?


「6年生の夏休みになると、周囲の勉強熱も最高潮に高まります。夫は息子に塾で8時間、自宅で6時間の勉強を課しました。こんなふうに書くと異常そのものに感じられますが、現在首都圏でトップレベルの学校を狙う場合、塾と自宅を合わせて12時間くらいは勉強している子どももザラにいる気がします。

その潮流そのものが行き過ぎなんじゃないかと、私は思います。この頃になると、私はひそかに『ここまで勉強しなくても入れる学校に入れたらいい』という気持ちになっていました。

自宅で息子が勉強しているときは、美味しいおやつを持って行ったり、気分転換になりそうな教養マンガを持っていったりしていました。塾がない日は散歩やファミレスに連れだすなどしていましたが、息子はそこでも勉強をしていました」

一見素晴らしい学習姿勢ですが、そのモチベーションが気がかりです。詳細なお話を伺っていると、息子さんに何がなんでも志望校に行きたい、という情熱をあまり感じません。透けて見えるのは、父と塾の期待に応えねばというひりひりした焦燥感でした。

トップにはトップの重圧があり、子どもがもっとも期待に応えたいのは、親のそれなのでしょう。

秋が来ると、息子さんからSOSが発されます。