作家・ライターとして、多くの20代~40代の男女に「現代の男女が抱える問題」について取材をしてきた山本理沙。その赤裸々な声は、まさに「現実は小説より奇なり」。社会も価値観も変化していく現代の家族の在り方を浮き彫りにします。

今回お話を伺うのは、シングルマザーで重度障害児を育てる知里さん(32歳・仮名)。妊娠中期で赤ちゃんの異常が判明、「骨が育っていない」「生まれてきても助からないかもしれない」と医師に言われた真斗くん(仮名)は現在7歳になります。看護師と同等と言えるケアをしながら、彼女が息子さんを一人で育てる決意をして離婚、地方から上京し、そして経済的・精神的に強く自立した経緯を語っていただきました。

 

取材者プロフィール知里さん(仮名)32歳
職業:会社経営 
家族構成:7歳の息子


      
 

母が「息子に守られている」と感じる理由 


「“息子くんは知里さんを選んで生まれてきたんだね”と、私を知る人はほぼ全員、そう言うんです」

力強い眼差しと弾けるような笑顔が印象的な知里さんが息子さんについて語る表情は、一層優しくなります。ご縁で彼女と知り合ったのは2年ほど前。「東京にしかない重度障害児専門の保育園に息子を入れるために、上京してきたばかりなんです」と、まだ20代で、さらにシングルマザーだった彼女の発言に衝撃を受けました。

以来、顔を合わせるたびに、知里さんは目標を叶え成長している印象があります。「苦労していないかな、大丈夫かな」なんて先入観で心配してしまう自分が恥ずかしくなるほど、彼女は前向きに充実した人生を送っているのです。

「息子が彼でなかったら、きっと田舎で専業主婦をしてたかも。それがダメというわけではなく、たぶん満ち足りて完結していたと思うので。でも私は、どんどん新しい世界に出ていくように息子に後押しされていると感じるんです。息子に守られながら、ここまで来たと思っています」

楽しそうに微笑む知里さんですが、生活を安定させるまでの道は決して平坦ではありませんでした。

妊娠時に赤ちゃんの異常が判明、ご主人の度重なる浮気からの離婚、過労による双極性障害、パニック障害など……様々な困難と彼女はどう向き合い、どのように乗り越えたのでしょうか?