現実世界で生きる人に捧げる気持ちで演じている


ーードラマ「18/40」で、アートカフェで働く有栖(福原遥)の妊娠が分かった時の、坂口さん演じる店長の寄り添い方がとても印象的でした。すごく実感がこもっていたし、あんな店長がいたらいいなと思ったのですが、そうやって学んだ経緯があってこその演技だったんですね。

坂口:あのシーンは、普通にやっちゃうと多分すごく男女の違いが浮き出るなっていう感じだったんです。だから演じ方で、どれだけジェンダーの境界線をなくせるかを意識しました。考え方や思想って、どれだけ気をつけていても、やっぱり出てくる言葉とか、ふとした時の行動とかでわかってしまうところがあると思うんですよね。

 

 

ーー役を演じるだけじゃなくて、その役の背景もすごく勉強されているイメージがあります。

坂口:演じる役のモデルになる人は、この世界に絶対存在しているって思ってやっています。その人が見た時に、「いや、それ違うよ、そんな気持ちじゃないよ」とか、「そんなのありえないよ」って思って欲しくないんです。本当に細かいことも、気になる人は気になる。その人に向けて「捧げる」じゃないけど、その人が観て「これは自分だ」とか、「同じだ」って、ちょっとでも思えたらいいなって思います。こういう仕事の人はこんなものを持っていて、こんなファッションで、ルーティーンで生活しているんだ、とか。それを知ることは自分の人生の役に立っているし、役について勉強することは自分のためでもあるんです。楽しいですね。

ダンサーでもある坂口さん、身のこなしも軽やか。

ーー今はだいぶ崩れてきましたけど、芸能人はエンターテイメントのことだけ語っていればいいみたいな風潮があります。坂口さんは、女らしさ男らしさの話や、終戦記念日には平和についてなど、ご自身の考えを積極的に発信されています。どういった思いで発信されているんでしょうか。

坂口:別にいいんですよ、言わなくても。でも、もっと社会のこと、政治のこととか、差別や暴力、ジェンダーのことが普通の日常会話になってほしいんです。もっとフランクに、日常の話題として「私あの政党の議員を割と応援してるんだけど」みたいな、そういう話がもっとあっていいんじゃないかなと思う。違和感とか、おかしいなって思うことがあれば言葉にして、発していかないと、もうどんどん生きづらい環境になっていってしまう気がしたんでしょうね。