スポーツイベント出席後、羽田空港から次の目的地であるシンガポールへ出発するヘンリー王子。写真:REX/アフロ

「アラフィフの壁」を無理なく、軽やかに越え続ける漫画家・コラムニストの辛酸なめ子さんが、自らのアンテナに引っかかった事象を紐解く連載です。今回は2023年8月に単独来日したイギリスのヘンリー王子が参加したスポーツイベントの潜入レポートをお届けします。

 

昨今、ヘンリー王子はメーガンさんの尽きせぬ野望に疲れ気味なのでは、と拝察します


ヘンリー王子には、対照的な二つの顔があるように思います。それは、やんちゃ系と意識高い系。やんちゃモードのヘンリー王子は、大麻を吸ったり、ナチス・ドイツのコスプレをしたり、ラスベガスのパーティで全裸になったり、どこか危うい言動から目が離せません。回顧録『SPARE(原題)』でもイキり散らかしていて、コカインや大麻の使用、パブの裏での初体験、戦闘機の攻撃訓練で父の車を標的にしかける、タリバン兵殺害などを告白。物議を醸しました。

いっぽうで、意識高い系のヘンリー王子は慈善活動に励んだり、国連などでスピーチしたりしています。メーガンさんと出会ってから、ますます意識の高みに達しているように見えます。

Netflixのドキュメンタリー「ハリー&メーガン」では、メーガンさんに感化されて、社会的な活動に力を入れるようになったヘンリー王子の姿(でも表情には覇気がない)が印象的でした。「お互い別々にやってきてそれが一緒になった。すごい合体です」と語っていた王子。頭が良く自己肯定感が高いメーガンさんが、自分の素晴らしさについて啓蒙したのか、ヘンリー王子は「誰もが僕の妻について大きな機会を逃しました。世界的な損失です」と、王室離脱の影響について語っていました。英国王室であったとされる差別など、あらゆる差別について問題意識を持っているのは素晴らしいですが、番組では、自分たちの扱いに対しての不平不満が多い印象でした。

メーガンさんとのイチャつきシーンもところどころに出てきて、この頃は二人は夫婦円満なのが伺い知れます。ヘンリー王子はメーガンファーストになるあまり、英国の伝統や歴史、家族へのリスペクトも失ってしまっているようでした。ちなみにメーガンさんと出会ったのは、「干草の中で針をみつけたようなもの」だと語っていました。なぜそんな痛い例えにしたのか謎ですが、針のような鋭い刺激を求めていたのでしょうか。

しかし昨今は、メーガンさんの尽きせぬ野望にヘンリー王子は疲れ気味なのでは、と拝察します。恋愛の洗脳も解けはじめているような……。メーガンさんは、社会的な活動家(もしくは政治家)、王族、セレブ、その全てになりたいと思っているかのようです。ダイアナ妃とビヨンセとキム・カーダシアンとミシェル・オバマを合体させたような、世界的なカリスマに。以前、ヘンリー王子がDisneyのCEOに妻を売り込む姿も目撃されていますが、このままだとヘンリー王子はメーガンさんの踏み台というかマネージャーにされてしまいそうです。