家族には「違うと思っても、申し訳なくて言えない」ことも

髪はボサボサ、爪はガジガジ...娘の私が守りたかった、母の「美意識」という尊厳【福本敦子×森田敦子】_img0
 

森田 だから本来は家族だけがやることじゃなくて、プロの手を借りながらできるシステムになるべきだと思うんだけどね……。そうやって介護する側とされる側がどこか申し訳ないと思いながらだと、身体のケアも十分ではなくなってきたりするし、そうなると自尊心とか尊厳っていうのはどうしても下がりやすくはなるんだよね。

福本 うんうん。お母さんも最期は訪問看護師さんにやり方を教えてもらって、顔や手足を全部キレイにしてから亡くなったので、なんだかわかる気がします。

 

森田 特に見えてる部分はそうだよね。

福本 もう人に会っても大丈夫だからねって伝えてから亡くなってるし、キレイにしておいてよかったとお葬式のときに本当に思いました。そういうケアみたいなことで保てる気持ちの部分だったり、すごさ、パワーみたいなものがもしかしたら一般的にはそこまで伝えられていないのかも? とも感じました。

森田 そう、私は今高齢者医療の現場に携わって、きっとこれから私の主力はここになると思うんだけど、親のケアは他人に任せた方がいいんだよ、絶対に。家族が潰れちゃうから。例えば膣周りだったりおむつのケアをするときってね、絶対子供に見せないのよ。だけど見せないと子供はわからないから。どんなにグチャグチャだったかとか、大変だったかっていうのを親は子供に見せないんだよね。だからスペシャリストがやった方が圧倒的に楽なの。

例えば高齢のご夫婦でね、夫が妻の面倒を見るとか、その逆でも、痛かったり、なんか違うと思っても申し訳なくて言えないんだよね。

福本 あ、それはすごく思いました。

森田 あ、思った?

福本 おむつを替えてるところは私見てないんですけど、お母さんのよだれを拭くことにしても家族も当事者だからそもそも動揺してるし、疲れているし、慣れてもいない。優しく拭くみたいなことまで気が回らなかったり。

森田 そうそう。

福本 ソフトタッチじゃないっていうか。