教育ジャーナリストとして教育現場を取材してきた筆者。STEM教育、名門ボーディングスクール、過熱する中学受験……さまざまなトピックについて取材をしてきました。

しかし、一方で気になっていたのは「置いてきぼりになっているお子さんがいるのではないか?」ということ。この10年で「不登校になり、家にずっと子どもがいる」という話をしばしば耳にするようになったからです。

近年「学校が辛いならば無理矢理行くよりも、ほかの方法を考えよう」という考えが広まりつつあり、それはとてもいい風潮だと思っています。でも実際にはどのような選択肢があるのでしょうか?

そのひとつの道として「海外の公立高校留学」があるときき、取材に伺いました。

写真:Shutterstock

お話を伺ったひと

赤井 知一さん
留学カウンセラー/株式会社ターニングポイント代表
25年にわたり留学サポートに従事。5000人以上を送り出す。現在は不登校の子どもたちに留学という選択肢を提案している。

酒井 邦彦さん
留学カウンセラー/株式会社ターニングポイント共同代表
多くの不登校生を留学先に送り出している。留学を通して自分の居場所を探す方法を提案している。

共同著書
『不登校生が留学で見つけた自分の居場所』

 


不登校生が海外留学は本当に可能?


――お二方は株式会社ターニングポイントを設立し、さまざまな事情を抱えて不登校のお子さんに留学カウンセラーとして海外で学ぶという選択肢を提案されていると伺いました。大変不躾ですが、非常に希望の持てるお話だと思う反面、現状日本で不登校のお子さんが果たして海外でうまくなじめるのかという心配があります。ぜひ実際の様子を伺いたいです。

赤井さん(以下敬称略):おっしゃる通り、皆さんそこに疑問を持ちます。じつは多くのお子さんは、全く違った環境に身を置くことで自分の居場所が見つかります。周りの目を気にせず自分らしく過ごし、日本のように受験に向けて5教科を万遍なく学ぶのではなく「得意を伸ばす」教育で学校嫌いを克服する子どもたちも多いです。

また、私たちの相談会に来てくださる不登校生の3人に1人は、「起立性調節障害」という症状があります。思春期によくみられる自律神経の機能失調で、眩暈や動悸がひどく、すんなり立ち上がれない症状です。原因は簡単には究明できないのですが、この症状に悩むのは真面目なお子さんが多く、ストレスも大いに関係していると見られています。

一昔前でしたら「やる気がない」「本人の問題だ」などと断じられてきた症状ですが、これは気力でなんとかなるという問題ではありません。体が辛くて起き上がれない、学校に通えないという状況です。例えばこのような症状で登校することができない子たちに、私たちは環境を変えてストレスを遠ざけることを提案しています。

――辛い不調で学校に通えないのはとても辛い状況だと思います。そのとき新しい選択肢がある、と思うことは非常に嬉しく、有効ですね。でも、健康なときでも海外に行って現地の学校に通うというのはハードルが高いとも感じます。実際にはどんな生活を送るのでしょうか? 

赤井:そうですね、皆さん同じ疑問を抱きながら相談にいらっしゃいます。まず、不登校になった原因がストレスや人間関係である場合、それを取り除くだけで、学校に通えるようになる子はたくさんいます。さまざまな要因から、私たちが勧める筆頭はニュージーランドです。その理由をご説明しましょう。