遺伝的要因と環境が現在の感受性に作用する
武田 HSPは生まれつきの気質ですが、赤ちゃんのときに「あなたはこの感受性ね」と数値が決まるわけではなく、遺伝的要因と環境の相互作用で、現在の感受性になる、というのがアーロン博士やプルース博士らHSPに関する研究者の見方です(論文2)。
アーロン博士は、HSPの現在の不安やうつの度合いと幼少期の環境との関連を調べた研究で、問題のある幼少期を送ったHSPはうつ・不安・内気になるリスクが高いけれど、問題のない幼少期を送ったHSPにはそのリスクは見られないことを発表しています(論文4)。
もともとの遺伝的要因と環境が現在の感受性に作用するというのは、カウンセリングをしていても、本当にその通りだと感じます。ご相談にいらっしゃる繊細さんが対人関係に敏感で苦労している場合、安心できない子ども時代を過ごしていることが多い。気質だけではなく、育った環境が絡んでくるんですよね。
名越 僕も調べてほしい。絶対、その遺伝子型をもっていると確信してんねんけど(笑)。
武田 これは繊細さんだけに起こることではないんですが、トラウマがあると、生きることが全体的に警戒モードになります。今にも危ないことが起きる気がして、常に気を張っているような状態です。トラウマというと、当時のつらい体験が生々しくよみがえってくる「フラッシュバック」の印象があるかもしれませんが、実際には、トラウマが引き起こす困りごとは様々です。ちょっとした物音にすごく驚いたり、小さな出来事に敏感になったり、人といるときにくつろげなくて常に緊張してしまう、あるいは常に考えごとをしていて全く気が休まらない、といった状態が起こることがあります。こうした敏感な状態を過覚醒(かかくせい)と言います。
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