子どもの5%前後がヤングケアラーという現実


近頃ヤングケアラーという言葉を頻繁に聞くようになったと思いませんか? ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと。

「周りにそんな子どもは見当たらない」とどこか他人事のように感じるかもしれません。ですが、厚生労働省と文部科学省が行った「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(2021年発表)によると、「世話をしている家族がいる」と答えた割合は、中学2年生で5.7%、全日制に通う高校2年生で4.1%という結果が出ています。これは、回答した中学2年生の17人に1人が「世話をしている家族がいる」と回答したということ。それにも関わらず、自分がヤングケアラーだと自覚している子どもはわずか2%程度しかいません。

ヤングケアラーは、日常的に以下のようなことを行っている18歳未満の子どもを指します。

世話をしている時間は、平日1日の平均で中学生が4時間、高校生が3.8時間という調査結果が出ており、食事の準備や洗濯などの家事、きょうだいの保育園への送迎、祖父母の介護や見守りなど、その内容は多岐にわたります。責任や負担の重さによって、学業や友人関係などに影響が出てしまうこともあるのです。

 

ヤングケアラーが活用したい制度


ヤングケアラーのように大変な状況にある方が、他人の力を借りることは決して悪いことではありません。相談者・由香里さんのお父様は、立ち上がりや歩行に不安定さが見られたり、トイレや入浴をする際には部分的な介助が必要とのこと。これは見守りや手助けなどの社会的支援が必要な状態です。要介護認定を受ければ、介護保険サービスを利用できる可能性が高いでしょう。

介護保険サービスとは、高齢者や特定の病気にかかっている人が、掃除や洗濯、買い物、調理、移動、排泄、入浴などにおいて、サポートを受けられる公的制度。自宅で受けられる在宅サービス、施設に通う通所サービス、介護施設で生活する施設サービスのほか、福祉用具を借りたり(福祉用具貸与)、自宅をリフォームする費用(居宅介護住宅改修費)を補助してくれる制度もあります。

仮に週に3回1時間ほど、訪問介護サービスを利用して食事をサポートしてもらった場合、費用の目安は月に7000〜8000円ほどです。

介護保険サービスは、65歳以上もしくは特定の病気にかかっている40歳以上の人が利用できる制度です。地域包括支援センターや自治体の介護保険課に申請が必要で、審査を経て介護が必要と認められた場合に利用できます。

いざという時の支援団体や相談窓口


ヤングケアラー問題は、学校や周囲の大人がいち早く気付くことが重要です。学校の欠席や遅刻が増えたときにヤングケアラーの問題が発覚することも多々あります。

今回の相談事例では、叔母である由香里さんがヤングケアラーの問題を深刻と受け止め、相談してくださいました。家庭内だけで解決が難しい場合は、児童相談所や市町村の福祉課・児童課、NPO団体に事情を話してみてください。NPO団体の中には、放課後学校や食事提供など、子どもが安心できる居場所作りを行っているところも多くあります。

東京都でも、ユースソーシャルワーカーと呼ばれる専門家によるヤングケアラー支援が2021年度から始まっています。国も2021年5月、ヤングケアラーの早期発見や相談支援の強化など、4つの支援策をまとめました。今後徐々に支援の輪が広がっていくと思われますので、ぜひ近隣の情報を集めてみてください。

 

これだけでなく、当事者が集う会などもあります。詳しくは、こども家庭庁が運営するヤングケアラー専用サイト一般社団法人ヤングケアラー協会のポータルサイトでご確認ください。

ヤングケアラーの中には、自分が当事者だと認識していなかったり、サポートを受けられることを知らない子どもが多数いるという現実があります。人によっては、「先生や友達には知られたくない」と思うヤングケアラーもいるので難しい問題ではありますが、1人でも多くの読者が気づいてくださることを期待して、今回のように記事を配信するのも1つの役割だと筆者は思っています。

あなたの知り合いに、ヤングケアラーらしきお子さんはいないでしょうか。


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

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