今、2人のコラボを見られることが、最高に熱くてクールな理由


「SUPER IDOL (Prod. MONJOE, SUNNY) 」は、本当に、最高にクールです。

この楽曲は、「アイドル」という言葉が使われているため、タイトルだけ見ればポップな曲調を予想する方が多いと思います。しかし、実際に曲を聴いてみると、出だしからストイックなHIPHOPのビートが続き、SKY-HIとNissyが歩んできたキャリアを思わせるようなリリックを、SKY-HIが私たちの耳に刻み付けていきます。

「帰り道にクラブでロック」「向こうから乗られにくる調子」

リリックの中にあるこの言葉を聞いて、私は思わず、SKY-HIがかつてアンダーグラウンドで活動していたことに想いを馳せてしまいました。SKY-HIは、グループでの活動を終えた後、そのまま都内のクラブに足しげく通って数々のラッパーとMCバトルを繰り広げたり、交流を深めたりしてきたからこそ、現在のラッパーとしての姿があるからです。

そして、「SUPER IDOL」というサビのフレーズの前に、NissyとSKY-HIが交互で歌う「君がどんなに足掻こうと その孤独と戦おうと そのすべて俺の足跡」という言葉。これには、パフォーマーを目指す若い世代へのメッセージも込められているのではないでしょうか。

二人がエンターテイメントの世界で活動を始めた当時は、日本の音楽シーンにおいては、バンドやソロアーティスト、男性・女性アイドルが人気を博しており、自分たちで楽曲制作にも携わりながらハイクオリティなパフォーマンスを繰り広げるダンス&ボーカルグループは珍しい存在でした。

SKY-HIやNissyを含めた先駆者たちが道なき道を切り開いてきたからこそ、昨今の国内のダンス&ボーカルグループシーンの盛り上がりがあるのです。

でも、そこに至るまでの道のりは決して楽ではなかったはずです。SKY-HIも著書『晴れるまで踊ろう』の中で「ずっと感じてきた孤独感は形容しがたいものがある。本当に。」という言葉を残しているくらいですから、やはり自分たちの活動が理解を得られず、時に心無い言葉をかけられたりして、苦労した時期も多かったのでしょう。

その孤独や苦労を乗り越えた今、SKY-HIとNissyはどんないわれない言葉も寄せ付けない「前人未踏のSUPER IDOL」になった。そんな彼らのキャリアは、若い世代のパフォーマーにとっては大きな希望です。

今回リリースされた楽曲は、背後にあるストーリーとメッセージ性が非常に深い。そんな風に感じました。

 


『D.U.N.K. Showcase』でつくられた輝くアーティストの居場所

楽曲の中でも少し描かれていたようなSKY-HIとNissyのキャリアがあった上で、今、日本のダンス&ボーカルグループシーンが大きな盛り上がりを見せています。

そのトレンドを表すものの1つが、SKY-HIの仕掛ける『D.U.N.K. Showcase』の盛り上がりです。2023年3月に開催したこのイベントは、わずか9カ月で2回目を実施するほど人気コンテンツとなりました。2回目の『D.U.N.K. Showcase』は、12月2日~3日に京セラドーム大阪で開催。SKY-HI、BE:FIRST、MAZZELらBMSG勢が出演したのはもちろんのこと、世界で人気を博している韓国の8人組ボーイズグループATEEZや2022年のデビュー以来圧倒的なスピードで活動領域を広げている&TEAM、日本だけでなく世界を舞台に活躍中のTravis Japanなど、今注目のアーティストが多数出演を果たし、『D.U.N.K.』でしか見られない熱いステージが繰り広げられました。

さらに『D.U.N.K. Showcase』で、楽しげな空気の中、高い熱量を持って事務所の垣根を超えたコラボレーションが実現したことは、日本のエンターテインメント業界に大きな影響をもたらしています。現に、SNSでのダンスコラボ動画の投稿が頻繁に見られるようになったり、テレビの音楽番組でもグループ間のコラボが見られるようになったりと、新たな潮流を生み出しています。
 

 

かつて「居場所がない」と苦悩していた一人のアーティストが、今や日本全体を巻き込みながら、歌とダンス、独自のスタイルを極めて輝きを放つアーティストたちの居場所をつくり上げている。

そんなSKY-HIの今日までのストーリーは、非常にエモーショナルであり、誰にでも描けるものではないなと感じます。

SKY-HIは最近、SNSやメディアで「幸せ」という言葉をよく使っているように思います。それはもしかすると、かつてやりたいことを理解してもらえず、アンダーグラウンドで必死に戦い続けてきた孤独な自分を、昨今の活動を通じて、ようやく救うことができたということの表れなのかもしれません。
 

構成・文/市岡光子
 

 

前回記事「【MAZZEL】ダンサーと演出家が紐解くメンバーの個性とグループの魅力とは?」>>

 
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