予報の精度に対して、伝え方が追いついてないのかもしれない

――これは天気予報の業界で決まった言い回しというわけではなく、各社が端的なタイトルをつけたいからこういう言い方になってるんでしょうか。

河津さん:気がつくとこうなりがちだな、というものですね。良くないな、と思いつつ、ネットだとPVを取るためにこういう言い回しをしてしまうところがあります。でも、本当はこういう意味だよっていうネタばらしぐらいはしておこうかなと思い、このポストをしてみました。

天気予報というのは、天候が荒れる地域に合わせて伝えるところがあるんです。本当に天候が荒れる地域は、結構限られていたりするのですが。たとえば、台風の時にも「東日本で警戒」と伝えることも多いのですが、東日本といっても関東も東海も、北陸地方も気象庁の区分だと東日本になるのでとても範囲が広いんです。その中で本当に台風が直撃して被害が出る地域は一部だったりするんですけれど、広くくくられてしまうので、本当ならばその実態がちゃんと伝わればいいなと思っていますね。


――台風の時にも「(天気予報が)言うほどひどくなかった」みたいな声がXではよく上がってきますね。

河津さん:「ひどくなかった」という声は必ず出るんですけれど、天気予報というのは人命を守るという一面もあるので、警戒しなきゃいけない人に警戒してほしいので、予報がずれることもあっても、ある程度広い範囲を想定して伝えるようにしているんです。それは当然のことなんですけれど、あんまり予報が外れすぎるとオオカミ少年みたいになってしまうので、逆に危なくない時は、危なくないですよ、って伝えてもいいのかなと思うことはありますね。


たとえば、大雪の可能性がある時に、電車が止まるぐらいの降り方なら広く警戒を呼びかけても良いと思うんですけれど、そんなに降らないのに「不要不急の外出はお控えください」って言っても、大げさだなと思われるので、そのへんのバランスを取ることは自分のアカウントからの発信では心がけています。


天候が荒れそうな時には注意喚起をするけれど、そうでもなさそうな時は無闇に煽らないようにしています。


――天気予報は荒れる可能性がある地域に寄せて伝えるものなんですね。

河津さん:昔は広い範囲でしか予報ができなかったし、予報よりも天候が悪くなることもあったと思うので広くあまねく呼びかけていましたが、今は地域ごとにピンポイントで正確に予報できるようになってきています。でも、予報の精度に対して、まだその伝え方が追いついてないんじゃないか、と思っています。

なので、本来は天候の警戒もピンポイントの地域に呼びかけていき、そんなに警戒する必要がない地域の方は普通に過ごした方が経済的にも良いのではないかと思いますし、そうなっていくといいなという気持ちがあります。

――昔からの天気予報のあり方を変えていった方がいいと。

河津さん:理想は一人一人に最適な情報が届けば一番いいかなとは思うんですけれど、そういうのも今後はAIで可能になってくるのかもしれませんね。

あとは「予報が当たらない」と言われる点で言うと、これは自論なんですけれど「予報が当たるようになってきたから、外れが目立ってしまう」のかなと思っています。たとえば、車に乗るのと飛行機に乗るのどっちが怖いか、という話をすると、飛行機に乗る方が怖いという方が結構いらっしゃるかなと思います。でも、事故の確率で言うと車の方が多分多いんですよね。このように、人間には、確率が低いことを過剰に怖がる傾向というものがあるのではと思っているので、外れると過剰に反応してしまうのかなと思っています。

たとえば「晴れ」という予報が当たっていても、皆さんいちいちカウントしないんですよ。確率が高いので。なので、普段は9割ぐらい当たってるのに、外れた1割が出た時に「この天気予報は当たらないじゃないか」と当たってないみたいなイメージが強くなっちゃうのかなと。だから、たまに予報が外れちゃった時のフォローも必要なのかもと思っています。


温暖化に対し、「このままじゃまずい」という意識を少しでも持ってもらえたら

――ちょっと方向性が変わるんですけれども、河津さんが好きな季節や天気はありますか。

河津さん:4月生まれということもあって春が好きですね。4月から5月くらいの、暑くも寒くもない、湿度も低くてちょうどいい時期がとても好きです。あと11月くらいの穏やかな日には、すごい散歩とかしたくなります。でも、最近よく言われる春と秋が短く感じるというのは私も思っています。全体的に暑くなっていますね。

――今の話にも繋がってくるんですけれども、ここ1、2年の天気について、何か思うことがあれば教えていただきたいです。結構変わってきてるなと感じるんですけれども。

河津さん:そうですよね。気象予報士の仕事を2010年くらいから始めて、もう14年ぐらいですが、天気のことがニュースでも扱われることがかなり増えたなと感じています。実際にデータで見ても、世界的に気温が高くなっています。特に、2020年代に入ってからかなりぐぐっと上がっています。


気温が上がるのに伴って、雨の降り方も激しくなっています。これはいろいろ言われていますが、人為的な要因による温暖化というのは間違いないはずです。今後、地域にもよりますが、夏場に外に出られないくらいの猛暑や、雨による災害が起きやすくなってくると思います。この現状を食い止めるのはなかなか難しいですが、定期的に猛暑や雨に関する情報を日々の天気予報で伝えることで、一人一人が「このままじゃまずいんだな」という意識を少しでも持ってもらえたらと思っています。

――去年2023年はすごく夏が長かったと思うのですが、 今後も夏が長くなる傾向にあるのでしょうか。

河津さん:季節問わず、気温のベースが上がっていってしまうので、冬でも気温が上がるのではないでしょうか。そういう意味では、冬が短く感じるということがあるのかもしれないですね。だから、先ほど春と秋が短いって言いましたけれど、冬が短くなる反面、春と秋が長く感じるということもあるかもしれないです。

すると、雪が降ることも少なくなるので、夏に水不足になるという影響はあると思います。冬、山に雪が降ってそれが春に雪解け水になって、夏にその水が使えるという流れなので、冬にある程度雪が降ってくれないと困ってしまう。このまま温暖化が進んでいくと、今の生活スタイルそのものが変わらざるを得なくなっちゃうという心配はありますね。


――最後に、今後新たな試みのポストをしていく計画などがあれば教えていただきたいです。

河津さん:今はTiktokなどショート動画全盛の時代になっているんじゃないかなと思うので、Xの方でも、ちょっとショート動画を出していこうかなと思っています。
テキストとか画像だけじゃなくて、ショート動画と天気予報も相性いいんじゃないかなと思うので、そこでまだ他の気象予報士や気象情報提供会社がやっていないようなことにチャレンジしていこうかなと思っています。

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ここ数年、気候が明らかに変わってきて、天気予報に対する注目が上がってきているのを感じます。多くの気象提供会社が情報を出す中、少しでも気候に興味を持ってもらおうと工夫する河津さんの唯一無二で前衛的なポストに込められた思いを聞けた貴重なインタビューでした。

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次回の「SNSで見つけた『バズり人』さん」もお楽しみに!


構成・文/大槻由実子
編集/坂口彩
 

「関東で雪」だと都内では降らない!?天気予報の「よくある」を打ち破る「アバンギャルド河津」さん_img0
 

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