歌手は与えられて歌うもの

前川:例えば石川さゆりさんとかは、お客様に対して、歌の力で訴える、聞かせる、歌い上げるという、持ってる姿勢が違いますよね。僕なんか、伝えたいとも思ってないし、作詞作曲した方から与えられて歌ってるだけ。レコーディングし終わった時に、一番喜んでるのは作詞作曲をされた先生です。自分の思いで、自分で手がけたんですから。

僕らは歌う側だから、それを与えられた側なんです。ちょっと冷静に考えると、多分この先生は僕と違う生き方をなさったんだろうな、やっぱり自分の人生とは違うな、なんてね。一緒の気持ちになれる場合と、ちょっと今の自分とは違う歌詞だなとかって思うことはありましたね。

「歌に浸らない、聞かせようと思わない」前川清の意外な発言から考える、自分がないからこそ得られるもの【インタビュー前編】_img0
 


全ては“縁”

——以前インタビューで「仕事でも何でも、嫌々ではないけれど自分が好き好んで何かをやるほうではないんです。それでも今までこうしてこの仕事を続けられたのは、その都度あったいろいろな縁によるものなんだと思います」(フジテレビュー!!【オヤジンセイ】前川清<前編>「いずれはちゃんとした仕事に」そう思いながらも芸歴51年)とおっしゃっていましたが、本意でなかった歌手の道でここまで来られたのは、縁あってのことなんでしょうか。

 

前川:みんな縁です。歌の道に入ったのも、小林正樹さんに声をかけられて、クール・ファイブ(内山田洋とクール・ファイブ)に入ったから。そして歌がうまくいかなかった時には、萩本欽一さんに声をかけていただいた。