魔法使いのようなママの「キャラ弁」

【続 窓ぎわのトットちゃん】常識に囚われないパパと、魔法使いのようなママ。“トットちゃん”がきらきらした瞳で見つめた両親の姿_img0
写真:Shutterstock

乃木坂で新婚生活をスタートさせた二人は、トットちゃんが生まれた後に北千束の一軒家にお引越し。パパとママ、弟二人、そしてシェパードのロッキーと暮らすことに。北千束のお家は赤い屋根に白い壁、床はフローリングというモダンなつくりで、庭にはスイレンの浮かぶ池とブドウ棚があったそうです。


当時、幼かったトットちゃんが着ていた服は、全てママの手作りだったといいます。「魔法使いみたい!」とトットちゃんが感激するその作り方は、気に入った布をトットちゃんにかぶせてハサミで布をチョキチョキ切り、あっという間に針と糸で縫い上げて、洋服に仕立ててしまうというもの。

パターンを使わずに素敵な洋服を作ってしまうママを、「料理にしてもお裁縫にしても、センスのよいママは、楽しみながら作っていたんだと思う」とトットちゃんは振り返ります。そして、お弁当についての思い出も語っています。
 


トットが通っていたトモエ学園では、ひところ、お弁当箱のふたを開けて食べるのではなく、お弁当箱をひっくり返して、底のほうから逆に開けて食べるのがはやったことがあって、子どもたちはみんな、お母さんに底が表になるようなお絵描かき弁当を作ってもらっていた。

そのお絵描き弁当が、トットのママは抜群に上手だった。底のほうからおかずを入れて、ひっくり返すとちゃんと女の子の顔になっていたりする。そのできばえにみんなが驚いて、お弁当の時間になると「見せて!」「見せて!」とトットのまわりに集まってきた。いまでいう「キャラ弁」は、じつは戦前から存在していたのだ。

 


なんと戦前から“キャラ弁”が存在していたとは……! という驚き。同時に、手間ひまはかかるけれど、「子どもに喜んで食べてもらいたい」というママの気持ちは今も昔も変わらないのだな、ということを窺い知れるエピソードです。

「他の家庭の普通」に囚われず自由さを失わないパパと、子どものわくわくを作り出す「魔法使い」のようなママ。そんな二人の愛を受けて過ごした「幸せな日々」には、庭の池の水面に反射する光のように、いつも瞳をきらきらと輝かせるトットちゃんの姿がありました。

 


次回は3月12日公開予定です。
 

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黒柳徹子(くろやなぎてつこ)さん
東京都生まれ。俳優、司会者、エッセイスト。東洋音楽学校(現・東京音楽大学)声学科卒業後、NHK専属のテレビ女優第1号として活躍する。『徹子の部屋』(1976年2月~、テレビ朝日)の放送は1万2000回を超え、同一司会者によるテレビ番組の最多放送世界記録を更新中。1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)は、国内で800万部、世界で2500万部を超える空前のベストセラーに。1984年よりユニセフ親善大使となり、のべ39ヵ国を訪問し、飢餓、戦争、病気などで苦しむ子どもたちを支える活動を続けている。おもな著書に『トットチャンネル』(新潮文庫)、『チャックより愛をこめて』(文春文庫)、『トットちゃんとトットちゃんたち』(講談社)などがある。

 

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『続 窓ぎわのトットちゃん』
著者:黒柳徹子 講談社 1650円(税込)

国民的ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』、42年ぶりの待望の続編。「トモエ学園」のその後、トットちゃんはどんな青春を過ごしたのか? トットちゃんと家族、そして周りの人たちは、戦争や疎開をどう見つめたのか——。泣いて、笑って、感動して、心を動かすことをやめないトットちゃんを通して、感動をもらえる一冊です。


構成/金澤英恵
 

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