万引きに誘われても回避できた理由とは?

 

知り合いの編集者Mさんに聞いた話を紹介します。Mさんは30代の男性です。彼は中学生のとき、クラスメート2人に「一緒に万引きをしよう」と誘われたそうです。Mさんは戸惑いながらも断れず、ちょっとした興味もあったりして、あるドラッグストアの入り口まで一緒に行きました。でも、そこで急に両親の顔が頭に浮かび「やっぱり、やめる」と宣言して帰りました。それにくじかれてか、他の2人もそのまま店を後にしました。しかしその後、別の日にその2人は万引きをして警察に捕まりました。

Mさんは「振り返ってみると、あのときはちょっとした人生の分かれ目でした。両親のことが大好きだったから万引きをしないで済んだんだと思います。大好きな両親を悲しませたくなかったんだと思います」と言っています。Mさんが子どもの頃、両親はいつも笑顔で優しくて、Mさんを慈しんでくれていたそうです。日頃からよく褒めてくれて、叱られた記憶は全くないそうです。ですからMさんも両親が大好きだったのです。

 


「大切な両親を悲しませたくない」という思いがブレーキに

Mさんはこのとき人生の岐路に立っていたのかもしれません。あのままクラスメートと一緒に万引きをしていたかもしれないのですから。何がMさんの心を踏みとどまらせたのでしょうか。

Mさんの心には「大切な両親を悲しませたくないし心配をかけさせたくない。泣いているところを見たくない」という思いが湧き上がったのだと思います。こうしたとき正しい選択ができるか否かは、親子関係が良好かどうかによってかなり影響される可能性があります。

もし親子関係が悪かった場合、ブレーキが効かなくなってしまう可能性が高まります。そんな家庭の子どもは、親に心配をかけることで愛情を実感したいと考えることすらあります。「ちゃんと自分のことを心配してくれるだろうか」「親が泣いて動揺しているところを見てみたい」と思うことすらあるのです。