猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。

それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。

今回登場するのは、シニア猫を含む3匹の猫と暮らす奈津さん。猫好きだった初婚時の元夫の影響で、奈津さんもすっかり猫好きになったものの、30代後半に離婚。離婚自体は双方合意していたものの、飼い猫たちをどちらが引き取るかで難航。話し合いの末、奈津さんは6匹の猫とともに再出発をすることに。もう結婚なんてすることはないと思っていたはずが、この6匹の猫たちがきっかけで15歳年下の男性と急接近! たくさんの猫たちと暮らし、看取り、猫が結んだ縁で再婚することになった、奈津さんの波乱万丈な物語です。

仲良しのおばあさん猫同士である寧々(写真左)とごま美。おこめは右前足がないけど、元気いっぱいの3歳
(写真:奈津さん、以下同)

<飼い主プロフィール> 
奈津さん(50代)
建築の設計図を作成する施工管理技士。20代後半に結婚し、その夫の影響で猫好きに。離婚で猫6匹を引き連れて、一念発起して職業訓練校に通い、建築関係のスキルを身につける。猫たちと生きていくつもりが、15歳年下の男性と出会い、猫たちが彼に懐いたことから再婚を決意。再婚後、元夫が病死し、遺された猫たちを引き取る。今は夫婦と猫3匹で穏やかな日々を送っている。

<同居猫プロフィール> 
寧々(18歳)
近所の家の屋根裏に入って鳴いているところを、その家の人に保護された茶トラのメス猫。その2日前に弟猫(角之進・10歳没)を奈津さんが引き取っていたご縁で、奈津さんの猫になる。離婚時に元夫の飼い猫になったが、元夫の病死により、再び奈津さんと暮らし始める。昔は優しい性格だったのに、なぜか気が強いおばあさんになっていた。


ごま美(17歳)元義弟の妻が保護したものの、「手に負えない」と言われ、奈津さんが引き取ることになったサビ柄のメス猫。チャイ氏(16歳没)の妹でもある。ビビりでとにかく人間が苦手。元夫の病死により、再び奈津さんと暮らし始める。寧々とは大の仲良し。

おこめ(3歳)奈津さんが動物病院で診察を待っている時、おじさんによって運び込まれた、車に轢かれて重症だったキジ白のメスの子猫。放っておけなくて奈津さんが自腹で診察してもらい、家に連れて帰る。里親を探すつもりが、結局奈津さんの家の猫に。事故で右前足をなくしてしまうものの、それ以外はいたって元気。末っ子気質の甘えん坊。


〈歴代猫プロフィール(離婚後に奈津さんが引き取った6匹)〉
ちっち(18歳没)
公園に捨てられていて、車のエンジンに入り込んで大鳴きしていたところを救出。奈津さんが初めて飼った猫で、猫のかわいさを教えてくれた思い出深いキジトラのメス猫。


きんた(16歳没)知人に「誰かが引き取らないと保健所に連れていくしかない」と言われ、奈津さんの元にやってきたベンガルのオス猫。体格は大きいけど、声は子猫のようで、やんちゃで甘えん坊。

だいず(18歳没)スーパー前の道路脇の植え込みで、タオルでぐるぐる巻きにされて捨てられていたのを奈津さんが発見して保護。ノミまみれでガリガリだったキジトラ柄のオス猫。聞き分けがよく、いつもごきげん。

チャイ氏(16歳没)寧々と一緒に持ち込まれた野良の子猫。茶白トラ柄のオス猫。きんたとだいずの手下のように、いつもあとをついて回っていた。ビビりで滅多に人前に姿を現さず、奈津さんにしか懐いていなかったのに、現夫にはすぐに慣れてしまう。

あずき(14歳没)スコティッシュ・フォールドのメス猫。きんたの元飼い主の彼女が飼っていたところ、家族が猫アレルギーで飼えなくなり、「どうしても奈津さんに引き取ってほしい」と懇願され、迎え入れる。甘えん坊。

十兵衛ぼん(12歳没)奈津さんが、近くで餌やりをしていた時に出会った子猫。茶トラのオス猫。ビビリゆえに他の猫となかなか仲良くできず、長年押入れで暮らしていた。だいずやちっちと仲良くなって押入れから出てくるようになったが、3年後に心臓病で他界。

 実家では両親が犬好きで、鳥や金魚、両生類などいろんな生き物も飼っていて、小さい頃から身近に何らかの生き物がいました。猫を好きになったのは元夫の影響。元夫は結婚前から猫を3匹飼っていて、私も彼と付き合っている時に、公園で拾った、ちっちという猫を飼い始めるようになりました。その後、ちっちを連れて彼と結婚。元夫と暮らしていた地域は捨て猫が多かったからか、元夫が猫を呼び集めてしまう人なのか、一番多い時で14匹の猫がいました。でも、全然多いとは思いませんでした。

たくさんの猫たちと暮らしていた頃

でも、夫と離婚することになります。離婚自体は合意していたものの、猫をどうするかでかなり揉めました。私も夫も、猫たちには思い入れがあったからです。できれば私が全部の猫を引き取りたかったのですが、猫たちにも派閥があり、そのグループごとに引き取ることにして、私は6匹を連れて家を出ました。でも、元夫と夫婦ではなくなったあとも、猫の近況報告だけはしよう、という約束をしました。

当時、独立してWeb関連の仕事はしていたものの、仕事は下り坂。一人で6匹の猫たちを食わせてやらなくてはならないため、安定した正社員になるべく就職活動をしましたが、全然だめ。どうせだめなら、やりたいことをやろう! と思い、子どもの頃から憧れていた建築関係の仕事に就くべく、職業訓練校に通い始めました。

そこで、いろんな年代の人たちと友達になりました。今の夫となる15歳年下の男性もその一人。彼は猫好きで、私が猫6匹を飼っていると知ると、「会いたい!」とうちに遊びに来ました。6匹の猫の中には、私しか触ることができず、友人が来ても決して姿を現さない“幻の猫”チャイ氏がいました。でも、チャイ氏は“幻の猫”のはずなのに、彼の目の前に現れて、あっという間に懐いたんです。「なんだこれは!?」と私が一番びっくりしました。

“幻の猫”チャイ氏(写真右)、その下にいるのがごま美

私は「もう結婚はいい」と思っていたので、その彼が、「一緒に住もう」と言ってくれても、すぐにはOKできませんでした。彼が15歳年下で、「私にはもったいない。まだ若いんだから、他にいい人が……」という思いもあったからです。でも、不思議なことに、チャイ氏だけでなく、6匹全員が彼にはベタベタに甘えるようになり、猫がここまで打ち解けているのなら……、と私も一緒に住む決意をしました。