猫と一緒に暮らす人にとっては、家族のように大事にしている猫と1日でも長く暮らせるのは幸せなことです。その一方で、猫も飼い主も年齢を重ねていくことになります。
それでも、猫とともに暮らしてきた時間はかけがえのないものですし、シニアになった猫だからこそ、愛着もひとしおです。そこでミモレでは、シニア猫(ここでは10歳以上と定義)と暮らす人たちのお話に耳を傾けてみようと思っています。
今回の舞台は、保護猫シェルター併設カフェ&スペース「すあま商會」(東京・板橋)。2021年2月にオープンしたこの店では、シックなインテリアのカフェでコーヒーやサンドイッチ、スイーツ類を味わうことができます。店の奥に大きな窓のついた部屋があり、そこにはキャットウォークやケージなどで自由に過ごす猫の姿が。ここは過酷な環境から保護された猫たちのシェルターで、来店客はカフェスペースでコーヒーを飲みながら猫たちの姿を見ることができるのです。カフェでの収益はすべて猫の保護活動に当てられ、シェルターの猫たちはいずれ里親と巡り合い、ここを卒業していくことになります。しかしその一方で、ここで長く暮らすことになってしまったシニア猫もいるのです。
「すあま商會」を運営するオーナーのすあまさんと、里親さんとのご縁を静かに待つシニア猫さんたちの物語です。
<飼い主プロフィール>
すあまさん(40代)フリーライター。日本の伝統文化や歴史などに造形が深く、雑誌や書籍の執筆などで活躍。神職資格も有している。10年以上、猫の保護活動に関わっており、コロナがきっかけで猫を保護でき、活動のための収入も得られる場所として「すあま商會」をオープンさせる。シェルターに常時10匹前後いる猫たちを世話しつつ、保護活動を続けている。自宅にも4匹の猫がいる。
<同居猫プロフィール>
東武東上線大山駅から徒歩2分のところに「すあま商會」をオープンしたのは2021年2月のこと。それまで長く保護猫活動に関わってきて、自宅でも猫を飼ったり、保護したりしていますが、コロナ禍で家にいる時間が長くなり、保護猫が増えると生活に支障が出ることから、別に部屋を借りようと思ったのです。
でも、賃料を払って部屋を確保するよりも、そこで収入が得られる形にしたほうがいいと考え、保護猫シェルター併設カフェ&スペースにすることに決めました。飲食と動物を飼うことの両方がOKの物件を探すのに苦労し、飲食店の営業許可申請や、第二種動物取扱業の登録(非営利の活動で、飼育施設で一定頭数以上の動物を取り扱うために必要なもの)が大変で、何もかも初めての経験でしたが、約4ヵ月でオープンにこぎつけました。
よく「猫カフェですか?」と勘違いされるのですが、そうではありません。任意で保護猫たちの生活費のための寄付をいただき、ルールを守った上でのシェルター内への入室はできますが、猫は人と触れ合うサービスのためにここにいるのではなく、安心できる新たな環境が見つかるまで一時的に暮らしているだけです。
一般的な猫の保護活動の大半は、ボランティアと寄付によって成り立っています。もちろんその善意は尊重すべきではありますが、私は猫の保護活動を応援してくださる方がこのカフェを利用したり、イベントスペースとして活用したり、店内で販売しているグッズを購入したりすることできちんと利益を得て、それで活動を続けられることを目指しています。ボランティアに頼らなくても、ビジネスとして成り立つことを証明したいと思っているのですが、そう簡単ではありません。カフェや場所貸し等で得られた利益全額だけでは到底足りず、私がフリーライターとして稼いだお金もここに費やしているのが現状です。
オープン当初は、災害が起こった時に避難にも対応できるように5匹までと決めていましたが、保護が必要な猫が多すぎて、実際は常時10匹以上います。外で保護をしてすぐにここに入れると病気などのリスクもあるため、ご協力をお願いしている「預かり」さんが何人かいらっしゃいます。猫たちは「預かり」さん宅での生活を経て、空きができたらこのシェルターにやってきます。
留女ちゃんと古奈禰ちゃんは、ここに来てもう2年になるメスのシニア猫です。
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