シリアスで重い感情や題材も、みなぎるエネルギーで出し尽くせるから舞台は楽しい

――『THE BEE』ではユーモラスな表現もありましたが、シリアスな話で、長澤さんは精神的に追い詰められていくような大変な役でした。そこでも発見はありましたか(*突然、脱獄囚に人質にされた、幼い子を持った母親を演じた。困惑や恐怖から刻々と変化していく心情の演技が見事だった)

長澤:確かに登場人物はすごく繊細な人物たちが多いですが、映像と違って、アップがないので、客席の後ろまで情報を届けるために、映像よりも声も動作も大きくなり、どんなにシリアスな題材を扱っていても、演じる側は重くなり過ぎずに済むことがあるように感じています。

 

――『THE  BEE』は動き回っていましたね。

長澤:スピード感のある作品で、体力の必要性を痛感しました。やっている最中は、エネルギーがみなぎりアドレナリンが出ていたからか、気づいていなかったのですが、あとで膝の生傷が日に日に増えていることに気づきました(笑)。どんな仕事でも打ち身や傷はできるから、あんまり気にしないでいたら、途中からあまりに傷が増えて、ファンデーションを塗ったほうが良いとアドバイスされて。でも塗っても、装置とこすれて、すぐ取れちゃって大変でした。


――精神的なことより肉体的な大変さがあるんですね。

長澤:今回の『正三角形関係』も、きっと話の流れ的には、大胆さと繊細さみたいなものがいつも隣り合わせにあって、どちらも突き詰めないといけないことになると思うので、それをうまく楽しみたいと思っています。

――ロンドン公演があるそうですね。

長澤:緊張しそうだなと思っていますが、日本で76公演やったあとだったら緊張しなくなっているかもしれません。

――緊張されるほうですか。

長澤:緊張するほうですが、始まってしまえばもうしょうがないと、開き直って一生懸命やるだけです。

――そういうふうに思えるようになったのは何がきっかけですか。

長澤:野田さんの演出を受けたことも大きいと思います。自分の存在に自信を持つことで堂々とその場に立つことができるようになりました。自分を信じて、自分を出し尽くせることってとても楽しいです。