僕や妻、娘の誰にも懐かず、警戒心丸出しだったにがりちゃんが、2024年になってから、反抗的な態度をとらなくなりました。家族のそばに寄り添うようになり、手を伸ばして頭を撫でても噛みつくどころか、気持ちよさそうにそれを受け入れるようになったのです。以前は絶対に考えられなかった抱っこもできるようになり、キスをしても嫌がりません。
9年かかってようやく、僕たち人間に心を開いてくれたということでしょうか? 今までにがりちゃんがすごく攻撃的だっただけに、とても感慨深いですし、何よりとてもかわいい! そりゃあうれしい気持ちにもなります。でも、心を開いてくれているかどうか、にがりちゃんがよろこんでいるかどうか、本当のところはわかりません。言葉を交わすことができないからです。
実は、にがりちゃんが僕たちとの触れ合いを嫌がらなくなったのと同時期に、彼女は体調を崩すことが多くなりました。今まで大きな病気もなかったのですが、食欲が落ち、衰弱して病院に駆け込むことが何度かありました。その都度、血液検査をしているのですが、特に異常はなく、処置をするとまた持ち直します。
だから、にがりちゃんがシャーシャーせずに僕たちを受け入れているのは、9年かけてようやく気を許してくれたからと思いたいけど、年を重ねて体が弱り、以前のようなパワーがなくなってきたことも一因ではないかと思うと、素直によろこべないところがあるのです。
たくさんの猫たちを保護してきて、シニア猫の魅力は、若い頃と比べて落ち着いているところにあります。有り余るエネルギーで走り回ることはないですし、長年一緒にいると、「この子、日本語わかってるかも?」と思うほど、通じあっていると感じられる時もあります。そばにいるだけでいい。そんなシニア猫を見ていると、しみじみ「
そして僕たちは、何匹もの猫たちを見送っていきました。これは何度経験しても慣れるものではなく、いつも後悔の連続。にがりちゃんも推定17歳ですから、その時は確実に近づいています。
こういう解釈は人間の一方的なものかもしれませんが、にがりちゃんが温厚になったのは、少し先のお別れも含めて、すべてを受け止めて考える時間を与えるためではないかという気がするんです。だから、にがりちゃんの温もりを感じつつ、にがりちゃんにとって何が一番幸せなのか、楽でいられるかを一生懸命考え、できる限りのことをしたいと思うのです。
文・編集/吉川明子
前回記事「もうすぐ22歳のおじいさん猫、病とともに歳を重ねて【シニア猫のお話】」>>
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