一部の論者は、今回の一連の動きは、当時の学園紛争をテーマにした名画『いちご白書』の再来であると指摘しています。『いちご白書』は、ニューヨークにある名門コロンビア大学で発生したデモをモチーフにした作品で、日本を含む全世界で大きな反響を呼びました。

「いちご白書」をもう一度? 全米に広がるガザ攻撃への反対デモと、1968年当時の“皮肉な共通点”とは_img0
『いちご白書』(1970) 写真:Everett Collection/アフロ

映画を観たことがない人でも、荒井由実(ユーミン)さんが作詞・作曲し、バンバンのばんばひろふみさんが歌った「『いちご白書』をもう一度」という曲は聞いたことがあるのではないでしょうか。『いちご白書』は、ちょっとしたきっかけから学生運動に身を投じた若者を鮮烈に描いた映画で、「『いちご白書』をもう一度」は、一連の運動に挫折した若者が、当時を切なく懐かしむ歌です。

こうした映画や歌からも分かるように、学生運動は1969年をピークに勢いを失っていくのですが、その経緯は非常に皮肉なものでした。
 

 


ベトナム戦争に反対する学生たちの多くは民主党支持者でした。ところが1968年の大統領選挙における民主党の候補者が、ベトナム戦争を遂行したジョンソン政権の副大統領(ヒューバート・ハンフリー氏)だったことに激しく失望。民主党は分裂してしまったのです。民主党の分裂によって結果的に共和党が有利になり、大統領選挙では、学生たちがもっとも嫌っていた共和党のリチャード・ニクソン氏が大統領になってしまいます。

民主党は、今も昔もユダヤ系米国人を有力な支持母体のひとつとしており、バイデン大統領はそうした経緯もあってイスラエル支援を強く打ち出しています。一方、大学でデモを行っている学生たちの多くは、1968年当時と同じく民主党支持者が多いはずですが、バイデン氏のイスラエルに対する姿勢には強く反発しています。

このままの状態が続くと、当時と同様、民主党が分裂してしまい、結果的にトランプ氏が有利になる可能性が否定できません。

中高年層を中心とする民主党の主流派は、学生らに対して、民主党が分裂するとトランプ氏に有利になってしまうので、中東政策について妥協するよう強く求めています。しかし、純粋な動機に燃える学生たちにしてみれば、移民排斥などを主張するトランプ氏より、バイデン氏の方がずっとマシであると言われても、ガザに対するイスラエルの行動は納得できないと考えているに違いありません。

価値観というのは人や世代によって大きく異なりますから、政治というのはとても難しいものです。大統領選挙終了後、果たして学生たちに笑顔は戻るのでしょうか?
 

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