夫婦カウンセリングを受けた結果


関係修復を決めた麻衣さんは、ネットやSNSで情報収集し、夫婦カウンセリングを予約。夫は週1回、夫婦で週2回通うことに決め、現在も進行中だそうです。

「専門家に頼ったのは本当によかったです。『家族仲良く、誰も傷つかない関係を築く』という目標を設定し、計画的に話し合いを始めました。1番よかったと思うのは、私自身も感情や考えを整理できたこと。プロのセラピーを受けることで見失っていた自己肯定感も回復したと思います

ちなみに一般的に束縛の原因は様々だそうですが、夫の場合は完璧主義で神経質、そして過度な愛情が暴走した結果、異常な行動を起こしたと私は理解しています。夫だけでなく、私も彼と向き合い、夫婦間のルールやコミュニケーションの仕方も決めました

麻衣さん夫婦が主に実践しているのは、自分の意見や感情を正直かつ適切に表現し、相手の意見や感情も尊重するというアサーティブコミュニケーション、相手の話を注意深く聞き、理解し、共感を示すというアクティブリスニング

束縛行動に対しては、具体的に境界設定をし、例えばスマホを盗み見た時は「プライバシーを侵害されて残念だ」「今後はプライバシーを尊重してほしい」「話し合ったルールを守ってほしい」など冷静に伝え、建設的に対処をするそう。

妻の外出を阻止すべく“救急車”を呼んだ夫。度を越した束縛に、離婚を考えた妻の意外な選択_img0
 

夫1人のカウンセリングでは、自己再生プログラムという、不安などの感情、衝動的な行動を抑えるセラピーを受けているそうです。もちろんまだ彼の束縛行動がゼロになったとは言えないですが、かなり変化はありました。

ルールを設けているので私が反論すれば聞いてくれますし、だいぶ真っ当なコミュニケーションが取れるようになっています。彼、カウンセラーさんのアドバイスで日記をつけたりもしてるんですよ。あとは、私に感謝をたくさん伝えてくれます」
 

 


思わず笑顔が漏れてしまった麻衣さんの穏やかな表情からは、過去のエピソードを話してくれている時とは全く別物の愛情が伺えました。

夫婦関係は少しずつ前進しているとはいえ、今でも麻衣さんは夫の嫌う服は敢えて選ばなかったり、また1人で外出できる頻度もさほど高くないそう。

しかし麻衣さんは、二人で設定した目標に向けて成長している実感があるとのこと。セラピー中は感情が溢れて涙が止まらなくなることもあるそうですが、お互いをさらけ出し、夫婦で努力をしている時間にじんわりと幸せを感じるそうです

「この先、また問題が起きる可能性もあると思います。でも私は、今夫と向き合っている時間は無駄じゃないと思うし、息子の状態も良好なので満足しています。周りには『甘い』『だからモラハラされるんだよ』なんてたくさん言われましたが、でも私はやりたくてやってるし、どちらにしろダメになるなら、一度くらい夫とちゃんと向き合いたいと思ったんです

お話の前半と後半で、麻衣さんの印象はだいぶ変わりました。

世間では離婚率が上がっており、またこの連載の取材においては、トラブルを抱えた夫婦が修復を選択するのは珍しいほうだと言えます。

離婚を決意し次のステージに進むことももちろん勇気のある行動と思いますが、しかし麻衣さんの仰るとおり、「病めるときも一緒にいる」という決意もまた、女性の強さをひしひしと感じ、また周りが何を言ってもご自身の心の声に素直に従う点も、芯の強さだと思いました。

人生はその人自身のものであり、誰にも支配されるべきではありません。麻衣さん夫婦の関係修復を心から応援しています。
 


写真/Shutterstock
取材・文/山本理沙
 
妻の外出を阻止すべく“救急車”を呼んだ夫。度を越した束縛に、離婚を考えた妻の意外な選択_img1
 

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