定型発達児とASD児。それぞれの親が感じた子どもの変化とは?

運動会で、ASD児とペアで走った通常クラスのある子のお母さんからは、こんなお手紙をもらいました。

「年長になり、グググッと成長し続けていることを先生から伺う話や相手を思いやるふとした言葉、行動から実感している毎日です。最近は『俺やるよ!』と掃除機をかけたり、お風呂洗いや米とぎなど、よくお手伝いをしてくれています。(中略)そんなわが子が、運動会を終えて帰宅したら、私の膝にのってきて『ギューしてぇ』と甘えてきたのです。年長になってから普段は強い男の子を装うようにもなったわが子が、ペアの友だちと一緒にリレーに取り組んできて、彼も精一杯頑張ったんだなと思いつつ、抱きしめていました。親としても至福の時間でした」

ASD児と一緒に過ごす中で、子どもたちがごく自然に支え合う関係性を築いていることが、自宅での生活態度にも心の育ちにも少なからず影響を及ぼしている様子がうかがえます。

一方、あるASD児のお母さんからは、次のような手紙をもらいました。

「うちの息子は、以前いた幼稚園の運動会にはほとんど参加せず、加配の先生(補助保育者)に手をひかれて指をくわえていました。プライドが高く、失敗を恐れる性格ゆえ、息子は人前で表現をしないし、できないのだと思い込んでいました。そんな自分たちの考えを恥じるほど、今年の息子は一生懸命生き生きと参加していました。特に『負けるくらいなら参加しない』と言っていたクラス対抗リレーに、一員として出ていた姿は感動的でした」

この子は運動会本番の数日前から、リレーで速く走るコツを父親に聞いていたそうです。「絶対に1位になる!」というクラスの固い決意をくみ取り、自身も同じ気持ちになっていたのでしょう。

発達障害児と定型発達児が影響し合いながら成長。日本の幼稚園が実践する「インクルーシブ教育」に、海外からも熱い視線!_img0
写真:Shutterstock


子どもたちが互いに支え合う関係性を自然に築く

とはいえ、運動会では全クラスが1位になれるわけではありません。歓喜に包まれるクラスは1位になったクラスだけ。あとのクラスは悔しさに打ちひしがれるのが運動会です。

今回の運動会も、敗れた悔しさから泣きだす子がいました。するとある子が、「3位」のトロフィーをそっと見せながら、「がんばったよ」と慰めていました。

本園の「混合教育」は単に“障害がある人にやさしくしましょう”というものではありません。障害のある子どももそうでない子どもも、それぞれが互いに当たり前に気遣い合うことで、成長することを目指すものです。障害のあるなしに関係なく、子どもたちが互いに支え合う関係性を自然に築きたい。悔し泣きする子を慰める子どもがごく自然に見られるのは、そんな目的を掲げている本園ならではの光景だと思います。