「(障がい児や医療的ケア児を育てている親たちは)今まさに、それぞれの勤め先で短時間勤務の延長を交渉している人もいれば、『今の法律には書いていないから』と言われたり、暗に退職をほのめかされたりしている人もいます。
勤め先の育児・介護の両立支援制度を使い果たし、改正法の施行に一縷の望みを託して休職に入った人もいれば、すでに失業してしまった人もいますし、今にも失業しそうな人も……。
今後、わが子をどうやって養育していったらいいのかと考えると、苦しくて眠れない夜を過ごす人たちが大勢いるんです」
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「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」という団体をご存じでしょうか? この会では、障がい児や医療的ケア児を育てながら、働き続けたい親たちが、ゆるやかにつながり、支え合っています。
この会の会長であり、朝日新聞社に勤めながら、重度の知的障がいを伴う重い自閉症の16歳の娘さんを育てていらっしゃる工藤さほさんへのインタビュー。第13回では、5月24日に参議院本会議で可決・成立した「改正育児・介護休業法」について、今回の改正が持つ意味を詳しく伺いました。
第12回はこちら>>><改正育児・介護休業法成立>【障がい児を育てながら働く⑫】「何としても仕事を続けたい」しかし会社の育児支援制度は、健常児の成育が基準となっており...
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——「改正育児・介護休業法」が成立しましたね。法改正を目指して多方面に働きかけを続けてきた親の会のみなさんにとって、非常に感慨深い瞬間だったのではないでしょうか?
5月24日正午過ぎ、「改正育児・介護休業法」が参議院本会議で可決・成立しました。参議院インターネット審議中継で、本会議場で議員の方々が一斉に起立し、法案が成立した瞬間を見たときは、鳥肌が立ちました。
—— 障がい児・医療的ケア児を育てている方々にとって、この法律はどういう点が画期的なのか、詳しく教えてください。
民間の労働者を対象とした「育児休業等に関する法律」(育児休業法)は1991年に成立、翌年施行されましたが、障がい児や医療的ケア児を育てながら働く親たちへの配慮の視点が盛り込まれたのは、今回が初めてのことなのです。
私たちのような親にとっては、今回の改正育児・介護休業法は生きる希望です。なぜなら働き手の「個別の意向確認と配慮」が義務化されたからです。
企業は今後、厚生労働省が定める省令や指針に基づき、障がい児や医療的ケア児を育てながら働く親やシングル家庭に対し、個別の意向を踏まえて、自社の状況に応じつつ、短時間勤務や看護休暇を制度の上限を超えて利用できるようにするといった対応が求められます。
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