13年続くTOKYO FMの朝の人気番組『Blue Ocean』のパーソナリティとしておなじみの住吉美紀さんが、ミモレでエッセイ連載をスタートします!
そのテーマは、住吉さんが50代の入り口に立って始めた「暮らしと人生の棚おろし」。
今までの自分を見直し、人生後半をあらためて考える、住吉さんの内面の旅が始まります。

「50代なんて、もっと大人だと思っていた」54歳で亡くなった父の年齢に近づいてきて思うこと【フリーアナウンサー住吉美紀】_img0
 

住吉美紀
フリーアナウンサー/文筆家。小学時代はアメリカ・シアトルで、高校時代はカナダ・バンクーバーで、英語と日本語両方の文化で育つ。国際基督教大学(ICU)卒業後、1996年にアナウンサーとしてNHK入局。2011年よりフリーに。2012年よりTOKYO FM 朝のワイド番組『Blue Ocean』(月~金、9:00~11:00)のパーソナリティを務める。夫とオープンしたカフェ「ミアヴァート珈琲」では店のプロデュースや焼菓子製作などを担当。著書に『自分へのごほうび』(幻冬舎)。
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50代なんて、もっと大人だと思っていた。
小さなことでは心揺れず、この先の人生どう過ごしていけば良いかクリアに見通しが立ち、それまでがんばってきた経験と智恵という貯金を糧に、心理的にも物理的にも余裕を持って生きていく段階に入っているとイメージしていた。「自分」というものが成熟し、確立している年代だと。
しかし、実際50代になってみると、まったく違った。

私の父は54歳の時、突然、交通事故で亡くなった。当時26歳だった私は、まったく予想していなかった出来事へのショックと、まだ数十年先だと思っていた父との別れが心の準備もできぬまま急に来てしまったことへの悲しみから、しばらく立ち直れなかった。

何よりも、たくさんの後悔に襲われた。どうして実家に電話する度に父に替わってもらわなかったのだろう。どうして社会人の先輩として、父の話をもっと聞いておかなかったのだろう。どうして父の日々考えていることに耳を傾けなかったのだろう。どうして尊敬していることをちゃんと伝えなかったのだろう。当時、父は母とカナダで、私は日本で生活していたため、最後数年は年に一、二度しか会えていなかった。

「50代なんて、もっと大人だと思っていた」54歳で亡くなった父の年齢に近づいてきて思うこと【フリーアナウンサー住吉美紀】_img1
歳を重ねるほどに、自分を父に重ねて考えるように。写真は七五三の私と両親。

そんな中、父が自ら望んでカナダの移民となり、ゴルフやヨットなど好きなことに勤しみながら暮らしてくれていたことが、残された私たち家族の救いにもなった。ただ働き詰めじゃなくて、せめて晩年は人生を楽しめてよかったと。

私の人生観も決定的に変わった。人はいつ死ぬかわからないからこそ、一日一日を大切に、「今」を充実させないと、という強い意識が芽生えた。小さなウキウキわくわくを見逃さずに味わい、幸せを日々感じながら暮らしたいと思うようになった。「一度きりの人生、後悔するよりとりあえず動いてみる」という方針のもと、挑戦してみたい仕事に積極的に手を挙げたり、組織を離れて独立したり、家族が欲しいという理由で結婚相手を貪欲に探したりと、思いを行動に移してきた。

 
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