そのシェルターを運営する人に、大家さんと夢の話をしました。するといろいろアドバイスをくれました。私も夢がどうなってしまうかは気になっていたので、その人に相談しているうちに、自分が夢を引き取って終生面倒をみようという気持ちが固まっていきました。
大家さんが通うデイサービスの人が協力してくれ、大家さんに「いつでも夢ちゃんに会えるから」と根気よく説得。2022年5月、私が猫を預かるという形で、第三者を交えて覚書を交わし、夢を引き取ることになったのです。施設に入居したその年に大家さんが亡くなったため、私が正式な飼い主になりました。
夢がうちに来た時は警戒心全開でベッドの下に隠れてしまいました。私は猫を飼うのに必要なものは何かすらわからない状態だったので、シェルターの人にはすごくお世話になりました。その人に、「無理に距離を縮めず、夢ちゃんには何も求めない」とアドバイスされていたので、夢がずっとベッドの下にいたければそれでいい、と見守りました。うちは狭い賃貸物件で、この家全部が夢のケージになったと思えばいい、と自分を納得させました。でも、数日もすれば夢も新しい暮らしに慣れたようで、1週間後にベッドの上に上がって来た時は感動しましたし、夢にベッドを占領されたのもうれしい誤算でした。
夢は白血病やエイズなどは陰性で、毎日元気ににゃーにゃー鳴いています。はじめは何か不満があって訴えているのかと思ったのですが、どうやら単なるおしゃべりだったようです。一方で、おしっこを壁にかけてしまうという癖がありました。これはたぶん大家さんが猫の世話を見ることができず、汚くなったトイレに排泄したくないがために、おしっこを壁にかけるようになったのかと考えられます。そう思い至った時、私は何も言えませんでした。ですから夢を叱るのではなく、壁にペットシーツを貼って対応することにしたのです。
一緒に暮らし始めて半年後に、頻繁におしっこをするので病院に連れて行ったら、「特発性膀胱炎」と診断されました。季節の変わり目に症状が出るようで、これは薬で対処しています。それ以外はシニア猫ですが、いたって健康です。
私が夢を引き取ったことを知った近所の人が、「あんなに懐かない猫と一緒に寝てるの?」「あの猫がいたずらしないって本当?」と驚くほど、夢はとてもいい子です。私はそんな夢を尊敬し、誇りに思っています。今年で11歳ですが、とても賢い、美魔女シニア猫だと思っています。
大家さんは認知症になってしまったために、猫の世話ができなくなってしまいました。高齢で猫を飼うことの問題を目の当たりにして、いろいろと考えさせられました。でも、大家さんは認知症が進行しても、夢がいるからと施設に入ることを拒み、夜中に大声で猫に語りかけていることが多かったので、夢のことを大切に思っていたことは間違いありません。
私はといえば、家に猫がいるよろこびを噛み締めています。あのふわふわした生き物を撫でると、確実に幸福物質が分泌されています! 床にモノを置かないようになり、掃除もこまめにするようになりました。
夢は9歳でうちに来たのですが、シニアだからこそ性格も習性も“完成”されていると感じました。猫は顔を見ても年齢を感じさせないですし、本当にかわいいです。
私が好きな旅行系YouTuberさんのコーヒーを飲みにいかなければ、保護猫のことをよく知らずに終わっていたし、夢を引き取ろうと決断しなかったでしょう。一杯のコーヒーがご縁になったと思って、最期までお世話します!
文・編集/吉川明子
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