2ヵ月ほど経っただろうか。ご飯を食べた後、バーに移動したところで、そろそろ聞いてみることにした。私は、是非またお付き合いしたいという気持ちになっています、アナタはどうですか、と。

彼は、言いにくそうに、答えた。楽しくないわけじゃないし、嫌いなわけじゃないけれど、やっぱりお付き合いは考えられないかも、と。楽しいのに? 嫌いじゃないのに? と聞き直すと、彼は言い淀んだ。

いずれにせよ今日で可否がはっきりするのだと察した。悔いが残らないようにしなければ、と思った。楽しいならば、可能性はゼロじゃない。私は、バーのテーブルに両手と額をつけ、ひれ伏した。「お願いします! 付き合ってください!」すると彼は言った。

「君はとても素敵な人だとは思う。けれど今の君は、20年前の君に、やっぱり勝てないんだ。僕はあの頃の君が、本当に好きだったんだ」

頭をハンマーで殴られたような衝撃だった。そう来るとは思わなかった。
40代になり、自分に興味を持ってくれる異性が減って、若い女性がライバルかもとは思っていたけれど、まさか、昔の、若い自分がライバルになるとは。時を超えた自分には、どう足掻いても勝てない。

時間は一方通行で、青春は戻らない。そうか、そうだよね。何でもやり直しが効くわけではない。そう考えた自分が甘かった。一瞬にして、切なさに襲われた。

「今の君は...」誠実で今も独身の元カレが言い淀んだ「衝撃的な言葉」で、40代の婚活は完全にゼロ地点へ【フリーアナウンサー住吉美紀】_img0
”テーブル土下座”をしたバーで飲んだ、苦いカクテル。

その後、若い私のどんなところが唯一無二だったのか、真摯に語ってくれた彼の言葉を聞いて、さらに切なくなった。あの頃から変わっていないと思って生きてきたけれど、やはり人は、自分を客観的に見ることができない。若い時にしかない奔放な強さ、怖いもの知らずの明るさ、周りを気にしない荒削りな自分らしさを、私は知らない間に失っていた。

歳月を重ね、少しずつ、ものわかりの良い、空気の読める大人に変わってしまっていたのだ。縮こまり、いつの間にか背中まで丸まってきていたのかもしれない。ショックだった。
 

 


今できることは、胸を張ることだ。悪いことばかりではない。あの頃からたくさんの経験を積んで、成長した自分だっているのだ。失敗した分、優しさも身についた。ここまで積み上げてきた今の自分で、前に進んでいくしかない。

そして、少なくとも、初恋のRくんと会う前の、自分を卑下した状態だからは脱していた。さらに、過去の「もしもあの時の彼と」的な迷いも、これですべて綺麗さっぱり、なくなった。完全なるゼロ地点だった。ある意味、自分、ここまでよくがんばった。
程なくして、夫と縁が生まれた。
 

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