昨今の美容医療ブームで、最近私の周囲では目袋(目の下のたるみ)を除去する施術を受ける人が増加中。インフルエンサーや美容クリニックの広告の影響もあってなのか、「目袋は敵! 一本のシワも許すまじ!」とばかりにアンチエイジング系の施術が大人気です。
かく言う私も、先日美容クリニックにカウンセリングに行き、「目の下のクマは目袋除去の手術をするしかない」と言われたばかり。そんな中、美しさとシワは何の関連性もないんだと気づかせてくれるのが、ジーナ・ローランズ。
8月14日に94歳で亡くなった彼女が、夫であるジョン・カサヴェテス監督の映画『こわれゆく女』でアカデミー主演女優賞にノミネートされたのは、44歳のとき。その後、1980年の『グロリア』では煙草を咥え、銃を放つマフィアの元情婦を演じ、そのかっこよさで多くの人を魅了しました。このときすでに50歳。「40を超えたら老婆の役しかない」と言われた当時のハリウッドで、それは画期的なことだったと思います。
マリリン・モンローの4歳年下で、若い頃は“モンローの再来”と言われたジーナ。40代になりシワやたるみが出てきても、妖艶で美しくてかっこいい彼女は、スクリーンで輝いていました。それは彼女のゴージャスなブロンドヘアのボリューム感や、しっかりした骨格と美しい姿勢も要因のひとつ。目の下にはしっかり目袋があるけれど、それは彼女が美しいと感じさせるのに何の障害にもなっていません。そんな些細なディテールよりも、観客の視線は彼女の堂々たる身のこなしや凜としたオーラに惹きつけられるのです。
そんな彼女の魅力は、2004年に息子のニック・カサヴェテスが監督を務めた恋愛映画の名作『きみに読む物語』でも変わらず。70歳近い老女の役でも、ジーナはやっぱり素敵でした。その後、劇中と同じアルツハイマー病を患い、闘病を続けていたといいます。
年齢に抗うアンチエイジングではなく、老化の速度を緩めてソフトランディングする「ウェルエイジング」について考えるようになった50代の私。私が素敵だと思う人たちは皆、年齢相応の小ジワや顔の陰影があり、だからこそその美しさにハッとさせられます。自分らしい雰囲気を壊さないまま、自然に見えるように適度なメンテナンスを行なう。ーーそれがどんなに難しいことなのか、この年齢になるとわかるから。
もちろん生まれ持った美貌やスタイルもあるだろうけれど、どうすればジーナのようにかっこいい50代になれるのか、考えているところであります。
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