緩和ケア医から幸せに死ぬためのアドバイス

終末期の患者さんが「後悔すること」から見えてくる、「幸せに逝く」ために必要な4つの準備_img0
写真:shutterstock

私は「緩和ケア医」であると冒頭でお伝えしました。緩和ケアと聞くと、余命わずかな末期がんの患者さんを対象に体の苦痛を薬で和らげるのが仕事だというイメージをお持ちの方は多いでしょう。治る見込みのない病気の患者さんを診ることも多いため、「医者なら治す医療に興味を持つのが普通では?」と言われたこともあります。

私が緩和ケア医になったのは、最後まで生きる人に興味があるから。大切な時間を生きる人を支えたいと思ったから、です。

緩和ケア医が対象とするのは末期のがん患者さんだけではありません。不安やストレスを抱える方に対して、生活の質を上げるアプローチを使って安心を提供したり、前向きな心を支えたりするのが仕事です。

治せる病気も増えてきていますが、高齢社会の帰結として現代の医療は、完治しない病気や不可逆の老いと向き合うことが増えています。その中でさらに大切さを増しているのが緩和ケアという医療です。緩和ケアは、病気を正しく受け止めて、時にうまく付き合い、与えられた大切な時間を後悔なく生ききるためのものなのです。

ここで求められるのが「早期緩和ケア」です。痛みや苦しみや不安が限界に達するまで我慢してから緩和ケアにかかるのでは遅い、と私は考えています。残された貴重な時間や生命力が痛みなどとの闘いに費やされてしまい、望みをかなえて後悔のないように生きることに使えなくなってしまうからです。

あなたがもし、軽くない病気、命に関わる病気になったら。どうか、与えられた時間を有意義に使うための人生のアドバイザーとして緩和ケア医を活用してください。

人生100年時代と言われるようになりました。長い人生を前向きな気持ちで生活するために、普段から健康・医療の頼れるアドバイザーを見つけておきましょう。何でも相談できる環境をつくっておくことは、元気で長生きするためには欠かせません。

あなたはどのように生きて、どのように死ぬのが幸せだと思いますか? 一度でいいから考えてみてほしいと思います。それが、死ぬときの後悔を少なくすることにつながるはずです。

 


著者プロフィール
大津秀一(おおつ・しゅういち)さん

早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。緩和医療医。茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。2006年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。2010年6月から東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターに所属し、緩和ケアセンター長を経て、2018年より現職。遠隔相談を導入した早期からの緩和ケア専業外来クリニックを日本で先駆けて設立・運営し、全国の患者さんが相談可能なオンラインでの緩和ケア相談「どこでも緩和R」を香川県坂出市の「みのりクリニック」と協働して行っている。著書に25万部のベストセラー『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)、『幸せに死ぬために─人生を豊かにする「早期緩和ケア」』(講談社現代新書)などがある。

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『死に方のダンドリ』
著:冨島佑允、奥 真也、坂本綾子、岡 信太郎、太田垣 章子、霜田里絵、中村明澄、大津秀一 ポプラ社 1100円(税込)

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構成/金澤英恵

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