「極めろ」ではAIに負けてしまう

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先ほど触れたように、私は塾経営とサッカーをはじめとするスポーツ選手のマネジメントという二足のわらじを履いています。それによって掛け算の相乗効果が得られています。

そんな私のスタンスを、批判的に見ている人たちがいるのも事実です。彼らの目には、塾経営とスポーツ選手のマネジメントのどちらかに集中しない私は「てきとう」で、仕事をなめているふうにも映るようです。

もちろん、仕事をなめているつもりなど毛頭ありません。ただ、てきとうだと言われたらそうなのかもしれません。むしろ、これからの時代は、てきとうなくらいでいいのではないかと私は思っています。

AIが登場する以前は、一つのことを「極める」人が高く評価されました。実際に、中途採用市場などでも、ジェネラリストよりスペシャリストのほうが歓迎されました。
しかし、コツコツ足し算を重ね極めていくというやり方は、戦う相手が人間だった時代にこそ強みを発揮するのであって、AIが相手なら話はまったく別です。一つのことを極める能力は、AIにかないっこありません。
 

 


複数の職業に携わる感覚を、抵抗なく身につける


一方で、てきとうなところに広く網を張るのは、AIより人間のほうが得意なはずです。私たちは、AIの得意なことではなく不得意なことをやっていかねばならないのです。だから、部下や我が子に対し、間違っても「極める」を強いてはいけません。それよりも、広く多くのことに手を伸ばさせてあげてください。

複数の職業に携わる感覚を抵抗なく身につけるためにも、若いうちから副業を始めることは非常に大事です。

それによって複数の環境に身を置けば、それぞれ異なる価値観に触れられます。そのときに、どちらが正しいか正しくないかを選別するのではなく、「どっちもアリだね」と思えたら最強です。またほかの違う環境に身を置くことになっても、「これもアリだね」と柔軟に受け入れられるでしょう。

AIが台頭するこれからの時代、こうした緩やかな判断ができる、ちょっといい加減なくらいの人が生き残ります。

「『どっちもアリだね』なんて甘すぎる。一つを選んで極めるべきだ」などという考えが胸をよぎったとしたら、相当にヤバいと思ってください。
 

著者プロフィール
富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)さん

進学塾VAMOS(バモス)代表。幼少期の10年を過ごしたスペインのマドリッドでサッカーに出会う。帰国後、日本の中学校・高校を経て京都大学経済学部に入学。大学卒業後、東京・吉祥寺で「進学塾VAMOS」を設立。現在は東京都内で5教室を展開。先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年首都圏トップクラスの、志望校への高い合格率を誇り、日本屈指の“成績が伸びる塾”として「プレジデントファミリー」「週刊ダイヤモンド」などに登場。子どもの主体性や個性に着目した論理的な授業で生徒の成績を伸ばし、圧倒的な支持を集めている。また全国各地で教育や子育て等に関する講演を多数行っている。自身のサッカー経験を活かし、現在は塾経営と合わせて、サッカー選手を中心としたスポーツ選手のマネージメント事業も行っている。『ひとりっ子の学力の伸ばし方』『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』(以上、ダイヤモンド社)等著書多数。

 

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『AIに潰されない 「頭のいい子」の育て方』
著者:富永雄輔 幻冬舎 1012円(税込)

生成AIの進化によって、今後5年で職業の2割が消えると予測される今。「一つを極める」成功体験は過去のものになり、親には「価値観の転換」が求められています。AIと協働する未来を見据えながらも、子どもが伸び伸びと生きる力を育むための実践的な育児論。


写真/Shutterstock
構成/金澤英恵
 
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