「自分ファーストを掲げながらも、日々の目に見えぬため息がちょっとしたゴミのように溜まっていく。その中から選りすぐりの愚痴をお届けしたい。お付き合い頂けると、とても嬉しい」。そんな文章からはじまる、にしおかすみこさんのエッセイ『ポンコツ一家2年目』。
認知症&糖尿病の母81歳、ダウン症の姉48歳、酔っぱらいの父82歳、そして元SMの女王様キャラの一発屋のにしおかすみこさん47歳、家族全員を“ポンコツ”とするこの物語は、今作で“2年目”に突入しました。著者のにしおかすみこさんに、実家で家族と共に暮らすようになった1年目からの変化、そして今の心境についてインタビューでお聞きします。
にしおかすみこさん
1974年生まれ。千葉県出身。2007年日本テレビ「エンタの神様」で女王様キャラのSMネタでブレイク。春風亭小朝師匠の指導のもと、落語に挑戦。高座名は「春風こえむ」。著書には自叙伝エッセイ『化けの皮』、本書のシリーズ1冊目にあたる『ポンコツ一家』がある。現在ではテレビ東京「なないろ日和!」など、リポーターとしても活躍中。趣味のマラソンでは、2019年にフルマラソンで3時間05分03秒、2015年能登半島すずウルトラマラソン102㎞女子の部にて第2位。最近はベジタブルカービングにハマり、クオリティの高さで話題になる。「FRaUweb」にて「ポンコツ一家」連載中(毎月20日更新)。
本人が一番不安だし、怖いんじゃないか
——『ポンコツ一家2年目』では、お母さまが知人のお葬式に「一緒についてきてくれない?」と付き添いをお願いしたりして、にしおかさんに素直に頼るようになったことも書かれています。一方で、お母さまが物忘れするスパンが短くなっているのかな……と感じる部分もありました。そうした変化をにしおかさん自身は今、どう感じていらっしゃいますか。
にしおかすみこさん(以下、にしおか):本人が一番不安だし、怖いんじゃないですかねえ。そこの気持ちを母は口にしないのでわかりません。当初はよく「頭かち割って死んでやる!」と言っていましたが、最近は言わなくなりました。その言葉を忘れてしまったのか、言わなくていい心境になったのか、何であれ一緒に穏やかな気持ちで過ごせる日が増えるといいなと思います。
私が実家に戻って実質4年が経ち、ずっとそばにいることが当たり前になったから、私に迷惑かけないようにとか、頑張ろう、生きようとかを思っては忘れ、また思ってを繰り返し、踏ん張ってくれているのかなぁ、どうですかねえ。
「なんか疲れる」をどう表現するかは人それぞれ
——にしおかさんの本では「介護」という言葉をほとんど使っていないですが、介護という言葉を使わないことに理由があったりしますか?
にしおか:母は認知症ですが今のところ、どこかに行って迷子になるわけでもなく、寝たきりの状況でもないです。寄り添うご家族の中にはもっと大変な方々がたくさんいらっしゃいます。なので「介護」という言葉を使うのはおこがましい気がしてしまって。私は一人暮らしをやめて実家に戻ったのですが、母姉父の三人分の家事が増えたことで、それが上手くこなせずにバタバタしてるだけなのかなあ。それにしては「なんか疲れる」なあといった感じです。
——「介護」と言うことで、プレッシャーや責任を重く感じてしまうというか……。
にしおか:そんなふうに考えたことはないです。元々、何も背負う気はないです。自分の元気と幸せが一番だと私は思っているので、できることしかやらないです。ただ、私のように「なんか疲れる」「しんどい」と思っている段階の方々もたくさんいると思うんです。
「介護」と名前を付けることで楽になる人もいれば、逆に名前を付けない方が楽な人もいるかもですよね。それは人それぞれでいいのかなって。言葉選びも自分が少しでも気が楽に、元気でいられるほうを選択したらいいと思います。
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