2012年、「日本の伝統文化が生き続けることができる土壌を形成したい」、そしてその核となる子どもたちに「本物の日本文化にふれる機会を提供したい」という彬子さまの思いに共鳴した有志が集まり、「心游舎」が設立されました。それは、英国で「日本を知らない」と感じた彬子さまの思いが込められたものだったのでしょう。

「心游舎」の活動拠点は、神社やお寺。かつて子どもたちが遊び場としていたところです。その神社やお寺を「現代版寺子屋」として、日本文化を発信する拠点とされています。

ワークショップやプログラムは、多彩で本格的なものばかり。着物や和紙などの伝統工芸の体験、歌舞伎や能、文楽など伝統芸能の公演、田植えやお茶の愉しみ方など日本の自然や風土にふれるキャンプ……。彬子さまの日本を代表する人々とのネットワークの広さに驚かされます。

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2019年6月、京都でトルコ大統領をお迎えされる彬子さま。写真/提供:Cem Oksuz/Turkish Presidency/Abaca/アフロ

彬子さまは、このようにおっしゃっています。

「日本の伝統文化を支えるヒトやモノが今危機に瀕しています。……日本で古くから行われてきた手間ひまかけた手仕事や、師匠から弟子へと受け継がれてきた芸能は、多くの若者にとっては経験したことのない非日常であり、過去の遺物になってしまっているのです。文化というものは生活の中に息づいてこそ文化と言える、と私は思います。……日常の一部として生かすことができなければ、我々の記憶にある日本の伝統文化は衰退の一途をたどるばかりです」
                     ――心游舎公式ホームページより

「心游舎」の活動には、子どもたちの笑顔があふれています。そして、一緒に過ごす彬子さまの笑顔もほんとうに自然で、そのお姿からは日本の文化をまずご自身が楽しまれていることが伝わってきます。

英国オックスフォード大学にあって全力で学ばれ、その時感じた日本への想いを、今、かたちにされつつあるのでしょう。彬子さまの魅力は、いつも一生懸命ご自分の足で歩いていらっしゃること。mi-mollet世代の女性として、眩しく感じられる生き方です。

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●参考文献/『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(彬子女王著、PHP文庫)、『京都 ものがたりの道』(彬子女王著、毎日新聞出版)、京都宮内庁公式ホームページ、心游舎公式ホームページ


彬子女王(あきこじょおう)
1981年、故寛仁親王殿下の第一女子としてご誕生。学習院大学を卒業後、英国オックスフォード大学マートン・コレッジに留学され、女性皇族初の博士号を取得してご帰国(専攻は日本美術)。立命館大学総合研究機構のポストドクトラルフェロー、特別招聘准教授を経て、現在は日本・トルコ協会総裁、一般社団法人日英協会名誉総裁、公益社団法人日本プロスキー教師協会総裁、公益社団法人日本ラグビーフットボール協会名誉総裁、京都産業大学日本文化研究所特別教授、京都市立芸術大学客員教授など、お役職多数。2012年、「日本文化を生き続けさせたい」との思いから心遊舎を設立、翌年の一般社団法人化に伴い総裁に就任し、子どもたちに本物の日本文化に触れる機会を提供する活動をしている。著書に『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP文庫)、『日本美のこころ』『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』(ともに小学館)、『京都 ものがたりの道』(毎日新聞出版)、監修に『ひげの殿下日記』(小学館)。


高木香織(たかぎ・かおり)
出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

 

キャプションは過去の資料をあたり、敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、その当時のものを使用しています。
 

バナー写真/JMPA
構成・文/高木香織
編集/立原由華里


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