「えー、ほんとにこれせんせーのおごり? 神!」
16時に模試が終わり、少し離れたファミレスに彼を連れて入った。母親には「模試が終わり次第、すぐに問題を見直すと効果的なので、今日の授業はファミレスでやらせてほしい」と伝えると、ふたつ返事でOKが出た。それどころか「できればそのあと夕飯を食べさせて、帰宅は19時以降にしてほしい」ときた。……丸一日息子がいないから、なにか良からぬことを画策しているに違いない。
母親に男がいて、会いたくてうずうずしていることは、毎日のように通っていればいやでもわかるようになっていた。
そして斗真くんも、それに気づいている。
「斗真くん、今日の試験はどうでしたか?」
腹減ったー! といいながらたっぷりとオーダーした斗真くんに、さっそく尋ねる。
「うーん、普通。まあいつも通り?」
大きな目がくるりと動く。落ち着かないときの彼の癖。
「そうですか。今回の模試の平均点はどのくらいだと思いますか? 毎年、この時期の模試は追い打ちをかけるように難易度が高いんですよ」
「そうなの? いや、定例テストとそんなに変わらないよ。150点満点の国語75、算数80、100点満点の理科45、社会55ってとこかな」
俺は斗真くんが持ち帰ってきた模試の問題用紙をめくって考えた。……ご名答。
「では斗真君は70、78、45、55くらいですね」
「え? オレ、解答書き込んでないよね? なんでわかるの?」
運ばれてきたハンバーグを食べようとしていた彼の手が止まった。
「君ならば本来は120、130、85、85は絶対に取れる。調整している理由はなんですか?
……もしかして星雲中に行きたくないから、でしょうか」
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