夫への交渉の結果は…


そんなモヤモヤした状況を打破できたのは、突発的なできごとのおかげでした。

友人数名が翌月にヨーロッパ旅行を企画していて、ふと「いいな、一緒に行きたいな〜」なんて口にしたら「お! 来れば?」と、彼らのフライト情報をLINEですぐに転送してくれたのです。

しかし日程を見ると、まるまる1週間。出発まで1カ月を切っている。しかも行き先はヨーロッパ、パリ便。去年のハワイ旅行だってかなりの心意気が必要だったのに、期間も距離も拡大しています。偶然にもその期間に特に大きな予定はなかったものの、「いや、さすがに今回は無理か……」と半ばあきらめの気持ちで、エールフランスのパリ便情報を心の中で10日ほど握りしめて過ごしていました。

母親である私が1週間ヨーロッパ周遊なんて、さすがに無理だろうと本当に思っていました。

「ママ業も有給があっていい?」5歳の息子と離れ、1週間ママOFF旅へ。“さすがに無理そうな夢”の夫への交渉法 _img0
 

けれどそんなある日の週末、息子と夫と近所の居酒屋でディナーをしているとき、ビールに酔った夫がいつになく上機嫌な様子をしていました。朝から夕方まで私が息子と二人で出かけていたので、夫はマイペースに昼間からお酒を飲んでのんびり一人の自由時間を過ごしていたからです。

ーー今だ。今しかない。

そんな夫を見て、強烈にそう思いました。まるで何かが降ってきたように「ダメ元で口にしてしまえ! ハワイの次はヨーロッパ。レベルアップできるなら最高じゃないか!」と、なぜだか自分にエンジンがかかったんです。

案の定、突拍子もなく「1人で1週間ヨーロッパへ行きたい」と訴えはじめた妻に夫は面食らっていましたが、アルコールがだいぶその衝撃を和らげてくれたよう。

なんと「1人のヨーロッパ旅行が、君にとって本当に必要なものなら、反対はしたくない」という、極めて真っ当でロジカルな回答が返ってきたんです。

私もそれに合わせて「身体が元気なうちに存分にできる旅行は貴重、プライスレスだ。この機会は逃しなくない」みたいなことを思いつくままペラペラ心を込めて演説し、もう一杯ハイボールを勧め、帰宅後にすぐに寝てしまった夫が正気に戻らないうちにフライトを確保しちゃったのです。

(去年も1人でハワイへ行ってるので、今思えば夫も多少心構えというか慣れはあったのでしょう。にしても、酔っていたとはいえ、ちょっと顔が歪んでたとはいえ、NOと言わなかった彼のプライドと誠実さ、理解と思いやりに深く感謝しています)

つづく。
 

 


(次回予告▶︎フライトを確保したものの、さすがに私の決断が遅かったため、なんと便乗する予定だったヨーロッパツアーは定員オーバー。少々凹みつつも、旅の趣旨も行き先もメンバーもガラリと変わり……)
 

文/山本理沙
漫画/小澤サチエ
 

 

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