「作家さんの中には『アートを作っている』という認識がない方もいて、知的障害のある方に多く見られる繰り返しの行動=『常同行動』と言われるものが結果的に素晴らしいアートを生み出します。一般の人ならつい周囲の目を気にするところですが、作家さんたちは自分の気持ちに正直に、やりたいことのために行動に移すことができる。あれだけの作品が作れるのは、そういう個人の本能的なもの、もっと言えば可能性に蓋がされていないからだと思うんです。そこには人が本来持っている才能みたいなものを開花させるための、いろんなヒントが隠れてるんじゃないか。代表の松田も言っていますが、研究したら面白いんじゃないかなと私自身も思っているんですよね」
普通でないことは可能性。海野さんの生き方とも重なるその考えを、ヘラルボニーは「異彩」「異彩作家」ということばで表現しています。
「『いさい』といえば通常は『異才』つまり『異なる才能』と書きますが、ヘラルボニーでは『異彩』すなわち『異なる彩り』と表現しています。普通ではないことは可能性で、決して『一部の才能ある作家』に限らず、誰もが異なる個性、色彩をもっているんですよね。知的障害のある作家のアートは始まりに過ぎず、世界80億人の『異彩』が自信を持って放たれる世界を目指すことが、私たちのミッションです」
海野 優子
株式会社ヘラルボニーにてブランドコミュニケーションチームのマネージャー。2008年にIT企業に新卒入社後、一貫してtoC事業の企画プランナー/ディレクターとして新規サービスの立ち上げに従事。転職先で編集メディアの立ち上げ後、2017年メルカリ在籍中に原発不明がんを患い、車椅子生活となる。それをきっかけにメルカリの障害者雇用部門を経て、2023年にヘラルボニーに入社。障害当事者の視点を持ちながら、オリジナルブランド「HERALBONY」のブランドや思想を届けるコミュニケーション設計を担当。ECやSNS運営、マネジメントに従事している。
取材・文/渥美志保
編集/立原由華里
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