例えば、パンフレットを刷新したいというときは、デザイン経験があるかどうか。
「ですが、ここでいう経験は、ある程度のデザイン経験があればOKなんですよ。アーティストみたいなレベル感はまったく必要とされていません。『昔、社内のパンフレットやポスターを作っていました』くらいで大丈夫。
PhotoshopやIllustratorなどの専門ソフトが使えないといけないわけではなく、PowerPointで作ったことがあるという程度でも問題ありません」(大林さん)
民間企業でデザインの副業というと、「本業デザイナー」じゃないと難しいイメージがありますが、求められるレベル感は全然違うようです。
「そして、2つめのポイント、これがかなり重要になってきます。『なぜその自治体なのか』という思い、エモーショナルな部分です。
この自治体のために何かやりたいという思いで今回手を挙げました、という人が受かりやすい傾向にあります。縁やゆかりがあればなおよし。別に出身地である必要はなくて、何か接点や共通点を見出せればいいと思います。
といっても、そうではない自治体もあります。あえて、まったく縁もゆかりもない人にアドバイスをもらいたいという場合も少なからずあるので、一概にはいえないところです。なので、まずはエントリーしてみるしかないですね」(大林さん)
ミドル世代の場合、「昔やったことはあるけれど今はやっていない」「ブランクがある」という業務も結構ありそうなのですが……。
「ブランクのあるなしよりも、今まで何をやってきたかが大事です。どちらかというと、スゴさとか正直どうでもいいんです。みなさん、複業ってスペシャリストしかできないと難しく考えがちですが、民間企業である程度仕事をしてきて、何かにある程度精通している部分があれば、複業は誰でもできるんですよ。
10年くらい同じことをやってきたら、いくらブランクがあったとしても、それはスペシャリスト。これは、自治体も同じ感覚です。むしろ民間企業で10年同じことをやってきたというのはかなり強い。それが事務であれ、なんであれ変わりません」(大林さん)
自治体の採用者が気にしている意外なところ
民間と行政の複業、一番の大きな違いはズバリ何でしょうか?
「民間での複業は即戦力であることが求められます。お金が発生するから結果を出してくださいということですね。ただ、ベンチャー企業やスタートアップ企業の中には『もう猫の手でも借りたい』という会社もあって、その場合は即戦力というより『能力よりも、この部分を手伝ってほしい』というのはありますね。あと、(能力よりも)信頼できる人にお任せしたいとか。最近は後者が多い印象です。
一方、自治体は即戦力というよりは、そもそも職員さんと一緒に仕事ができるコミュニケーション能力があるかとか、上から物を言う人でないかとかをすごく気にされています」(大林さん)
自治体の方のほうが上から目線で物を言いそうなイメージを抱いていましたが(失礼!)、そんな風に思われているなんて驚きです。
「民間の方と一緒に仕事ができるかどうか不安を持っている自治体の人は少なくありません。悪い意味ではなく、今までやったことないのでわからないんです」(大林さん)
では、採用されるために、具体的に何をすればよいでしょうか?
「まずは、自分のやってきたことを可視化することです。何でもできますっていう人は全然採用されないんですよ。自分のやってきたことを、数字でアピールできることが重要です。
前述のパンフレット作成の場合だとしたら、パンフレット作成のポイントや内容などに、数字をプラスしてみるだけで、印象が変わります。
例えば、PowerPoint歴10年、(例示した)チラシを作るのに30分、今まで作成したチラシやパンフレットは計30件と付加するだけでも、スキルが整理されます」(大林さん)
なるほど。細かい数字を追記するだけで、具体性が一気に高まります。
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