人間って毎日背筋をピンと伸ばしてはいられない


大森:今回の「ジェンダー関連本」については、私もちょっとだけ参加させていただきました。私は今は『VOCE』という編集部にいるんですが、机にジェンダー関連の本がすごく並んでいるんですね。それを見た今回の展覧会の神保編集長から「興味があるなら、おすすめを推薦して」と誘われまして。

「ジェンダー本だと企画が通らない、マーケットがない」は本当か?幅允孝・選、あなただけの1冊に出会うライブラリー_img0
 

幅:実はジェンダー関連の選書をしてほしいという依頼はすごく増えているんですよね。タイトルの数も増えていますし、表現形態のバリエーションも論文的なものからマンガや絵本まで広がり、問題意識も広く社会に共有されるようになっていますから、昔よりは選びやすいですね。ただ人間の根幹に関わるセンシティブな部分でもあり、不用意な提示の仕方をすれば誰かを傷つけてしまうリスクもあります。自分の思い込みや偏りに陥らないようスタッフの手も借りながら、様々な角度から光が当てられるよう丁寧に選びました。
 

 


大森:幅さんの選書は私も読んでいる本が多かったです。そのうえで長くエンタメに関わってきた私が推薦したのは「それっぽく見えない本」という感じでしょうか。あまり啓蒙的なものだと興味のある人しか読んでくれないというのは、mi-molletのようなweb媒体を経験するとPVという形でダイレクトに痛感させられます。セルフケアとしてのメンズ美容のマンガ『僕はメイクしてみることにした』を作ったのも、その視点で。

幅:おっしゃることわかります。私たちが絵本などを選んだのもそういう視点で。やっぱり人間って毎日背筋をピンと伸ばしてはいられないし、そうでない時にもすっと入っていけるようなもの、というか。 初めてのジェンダー本としてもいいですよね。そこで問題意識に目覚めたら、少し専門的なものに進んでいただけたらな、と。