テレビから流れてくる情報を信じている人と、ネットで得られる情報を信じている人。情報源が違うだけで、世界の見え方がまるで違うことに愕然としてしまうニュースが、昨今増えている気がします。
何を信じるかで、正義が変わる。その空恐ろしさを実感させてくれるのが、WOWOWで放送・配信がスタートした『連続ドラマW 誰かがこの町で』です。原作は、江戸川乱歩賞作家・佐野広実の同名小説。とある一家の失踪事件と、わずか6歳の男の子の誘拐致死事件。平穏な新興住宅地で起きた2つの事件を結ぶものは何か。同調圧力に序列意識。日本の抱えるムラ社会気質の問題点を強烈に炙り出す社会派ミステリーです。
本作で鶴田真由さんが演じるのは、弁護士の岩田喜久子。彼女が営む法律事務所に、消えた家族の行方を探す望月麻希(蒔田彩珠)が訪れたことから物語は動き出します。
35年以上にわたって女優として活躍し続ける一方、旅好きとして知られ、これまで訪れた国は50カ国以上。近年は写真展を開催するなど、まるで伸びざかりの植物のように興味のアンテナを広げ続ける鶴田さん。なぜ鶴田さんはいつまでも瑞々しくいられるのでしょうか。硬直しがちなミドルエイジに必要なものを、鶴田さんに聞いてみました。
自分が嫌だなと感じるところに身を置かない
——ドラマを拝見しましたが、あの町には住みたくないなと思いました(笑)。
あんなことって本当にあるんだろうかと思いますよね。恐ろしいなと思ったのが、人の正義って周りの環境によってだんだん歪んでいくんですね。そして、いつしかひとり歩きしはじめる。しかも、関わる人が多くなってくると、知らず知らずのうちに飲み込まれていって、余計におかしな方向に進んでいくんですよね。だから私も普段から自分の変わらない価値観はどこにあるんだろうということを常に意識しながら生活しています。
——変わらない価値観。
たとえば戦前と戦後でガラッと社会的な価値観が変わったように、昨日まで赤と言われていたものが、ある日を境にいきなり緑になることってあるんですよね。だからこそ、どんな時代でも変わらないもの――たとえば花を綺麗だと思う気持ちとか、人に優しくされたらうれしいとか、そういうことを大事にしていきたいなと思います。
——あの町で起きていることは突飛なようで他人事ではないんですよね。たぶん僕はあの町に住んでいたら防犯係に入っていると思います(笑)。
もしかしたら自分もそうなってしまうかもという思いがあるから、この作品は惹き込まれるんでしょうね。
——鶴田さんが、もしあの町に引っ越したらどうしますか。
おかしいなと思った時点で、すぐに引っ越します(笑)。自分が嫌だなと感じるところに身を置かない、というのは私の人生のルールの一つ。どんなに自分が気をつけようと注意していても、その中にいると、そのコミュニティの空気感に染まってしまうことってあると思うんです。だから、ちょっとでもネガティブな気配を感じたらすぐに離れる。幸せに暮らすための動物的勘は大事にしています。
——鶴田さん演じる岩田喜久子然り、江口洋介さん演じる真崎雄一然り、このドラマに出てくる登場人物たちはみんな過去に過ちを犯していて、悔いを抱えている。そこが大人の人間ドラマという感じがして好きです。
人生って必ずプラマイゼロなんだと思います。何か過ちを犯してしまったら、シミのようにずっと心に残っていて、いつか自分に返ってくる。因果応報なんですよね。大事なのは、どこで腹を括るか。過去の過ちを見て見ぬをふりするのではなく、ちゃんと償おうと向き合った瞬間、人生は好転していく。そういった生きる上での摂理がちゃんと描かれているから、観ている人も登場人物の誰かに自分を置き換えることができるんだと思います。
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